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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~


シャワーからでると、翔は既に彼の着替えをすませ、べッドに運び終わってくれていた。

「すげーよ。ぜんぜん目をあけない。疲れきってんのかな」

苦笑いして、ソフアにひいてたバスタオルを手にとる翔だって、外から帰ってきて、冷えきってるはずだ。
自分のことを後回しにして、俺の頼みにつきあってくれる弟に、ただ感謝する。

「翔」

「ん?」

「ありがとうな」

「…………ううん」

小さく笑って、翔は、シャワーあびてくるね、と浴室に向かった。



父さんと母さんが使ってた部屋。
ベッドに、来客用の布団をひいた、と翔は言っていた。
真新しいシーツの上で、彼は静かに眠っていた。

改めて、顔をまじまじとみる。
色白の肌。
固く閉じられた目。
公園で、見たときのような苦しげな表情は、今はないが、頬が少し紅潮し、息も少し荒いから、発熱してきてるのだろう。

氷枕あったかなあ…と考える。

夕方みた顔は、あどけなさが残っていた。
夜の街を徘徊するには、早い年齢にちがいない。
高校生くらいだろうか。

いろいろ考えながら、じっとたたずむ。

どれくらいそうしていたか、

「智兄、ちょっと」

風呂から上がったらしい翔が、入り口から小声で、呼ぶ声に、はっと顔をあげた。

俺は、頷いて、部屋を後にした。







「明日なんだけどさ。俺、学校休むね?」

「…………えっ」

「だって。あいつ一人にできないでしょ」

水を飲みながら、翔が、当然じゃんという顔した。

そうか…………衝動的に行動しちまったけど、いろいろ問題あるな…………

俺は、改めて、人一人を連れて帰ってきてしまったことの重大さを思いしる。

黙ってしまった俺に、翔が笑顔で言う。

「気にしなくていいよ。俺、優等生だから授業でなくたって、成績はキープできるから」

「…………すげーな」

「ふふふ」

「ごめんな」

「さっきからそればっかりだね」

もういいから、と翔はくすくす笑った。

「もう、連れてきてしまった以上はさ、俺も協力するから。あいつが元気になるまでは面倒みてやるよ? そのかわり、妙な真似したら、知らねえよ」

「…………うん」

ちょっと怖い口ぶりでいう翔に、俺は、あの子はヤバくはないだろう、という、根拠のない確信があった。

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