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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~

 
Satoshi



少しは具合がよくなってたらいいな、と考えながら帰宅したら、かずがいなかった。

翔に、事情をきき、かずの置き手紙を読む。



帰る…?………どこへだよ。



思わず心でつっこんだ。
そんなのできてるなら、とっくに帰ってるだろう?
あんな公園で夜更けまで倒れてたりしないよな。


俺が思ってることが分かったのか、傍らで絶妙なタイミングで、翔が口を開いた。


「…………ここまでだよ。智兄。ここからはもう介入しちゃダメだ」



…………分かってるよ。



「…………そうだな」



かずが、自分の意思で出ていったのなら、俺たちにかずを連れ戻す理由もないし、権利もない。

帰る、と書いてあるのなら、それが本当であれ、嘘であれ、俺たちにはもう何もできない。


気になるけど。
…………忘れなきゃな。



「…………ありがとうな、翔」

俺は、もう一度礼を言った。

俺の勘につきあわせた、翔に。

翔は、ううん、と首を振った。


「………なんかさ、あいつってさ、周りになんとかしてやりたいって思わせる雰囲気を持ってるよね。なんか、まんまとのせられたわ」

翔がくすくす笑って、キッチンの鍋を指差す。


「夕飯、うどんだし」


俺も、ふふふと笑った。
夕飯は、かず仕様だったんだな。 


「肌寒いから丁度いいよ。卵のせといて」

「わかってる」


俺は、スーツを脱ぐために、自室に向かった。





向かい合って、うどんをすする。

きちんと出汁からとった味。
翔のつくる和食はいつも美味いから、そのへんのチェーン店の飯なんて、本当に食べられない。
つくづく…………できた主夫だ。

「智兄さ…………あの子をつれて帰ろうと思ったのは、なんで?」

カマボコをつんつんとしながら、翔が不思議そうに尋ねた。

「本当にただの勘だけ?」

溶けたトロロ昆布が大好きな俺は、出汁にからませたものを、つるつるっと口にいれ、うーん、とうなった。

「うま」

「ねえったら」

「ん?」

翔が笑う。





勘だけ…………じゃない。

でも信じてくれっかな?

俺は、苦笑いして、こちらを真っ直ぐ見る翔に、答えた。

「ん……なんかなあ。聞こえたんだよな。たすけ
てって」

「…………なにそれ。あいつが?」

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