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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~

「はっきり聞こえたわけじゃないんだ。でも、SOS 信号が、かずから、ずっとでてる感じ」

「…………なんか、分かるかも」

翔がぽつりと同調したから、俺は、驚いた。
言葉では上手く伝えられないと思っていたが。


…………分かるか。


「だからさ、なんとかしてあげたいって、思ったんだろうなって、思う」

「そうか」

「うん」

「…………今頃どうしてるかな」

「うち出たこと後悔してんじゃないの」

ふふふっと笑いあった。

実際、体調がすぐれないまま出ていってしまってるから、心配ではあるが。

切り替えなきゃな。

「さ。片付けよ。俺休んでた時の課題が出ててさ」

翔が場の空気を変えるように、明るい口調で立ち上がった。

「おう、悪いな」

「いーえ」



その時だった。



     
    イヤだっ!!!




「!」


突如頭に鳴り響いた叫び声。


動きを一瞬止めてしまった俺たちは、顔を見合わせた。
  

「聞こえたか?」

「…………うん」

「…………かずの声だな」

「うん」



    やだっ!!!
    

    大野さん!助けてっ…………翔っ!



今度こそ息を飲んだ。

頭にクリアに響いた声。
切羽詰まった絶叫。

何故、聞こえるのか。
これはなんなのか。

そんなことは後回しだ。


かずの声が助けを求めてる。


胸がドキドキしてきた。
かずの身に何が起こってるのか。
よろしくない状況であることは、間違いない。


「智兄…………!」

「ちょっと待ってろ」


俺は、指を額にあて、目を閉じた。
身体中のチカラを一気にためて、広範囲に飛ばしかずの行方をおう。

手がかりは今の声。
そして、記憶に残るあの子の気配。
探す範囲が広いから、こちらの負担も大きい。


どこだ…………かず…………!


聞こえてきた方角と、気配だけで場所を割り出すのは、至難の技だ。

翔が、そっと俺の背中に手をおいた。
温かな翔のチカラが、ながれこんできた。

「………智兄、焦らないで」

「…………ああ」

俺は、深呼吸を繰り返し、集中した。

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