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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~

目を閉じ、さまよう暗闇の世界。
集中し、ひたすら、かずの気配を追う。
どんな空気の変化も見逃さないように、全神経をとがらせて。


…………そのうちに真っ暗ななか、ぽっと小さく明かりが灯った。


みつけた。



、頭の中のスイッチを切り替え、空からピントをあわせていく。


…………ここからそう離れていない。
駅前広場から、繁華街をぬけ、300メートルほど行った先の住宅街。


「…………っ」


息を飲んだ。
全身の温度が、二、三度あがったかもしれない。


少し古びたアパートの二階。

散らかり放題の寝室らしき場所。

パイプベッドに寝かされたかず。

両腕はひものようなもので頭の上で縛られ、パイプにくくられている。
その上に覆い被さる男。
はだかれたシャツのすきまから、むしゃぶりつくように舌をはわせているのがわかった。

かずの泣き顔。



…………見てられない!



険しい顔で、唐突に目を開けた俺を、傍らに座った翔が心配そうに覗きこんでいた。


「…………いた?」

「いた。すぐ行くぞ」

「うん」


ベランダから二人で飛ぶ。

翔のチカラで一気に急上昇した。

「北へ」

「わかった」

地上からみえない位置で、おれたちは飛んだ。







数分後、頭の中で視たアパートの前に俺たちはおり立った。

外付けの鉄の階段をかけあがる。
二階奥から二番目の部屋だ。

古びたドアには表札すらない。

「ここ?」

「そう」

翔を振り返ったら、翔は分かってるというように頷き、チカラを使って音もなく鍵をあけた。

ためらいもせずにドアをあけた。
靴が散乱している小さなたたきには、見覚えのあるスニーカー。

関係なく土足で踏み込んだ。

入ってすぐのキッチンを足早に通り抜ける。
リビングの横の襖をがらりとあけた。

ベッドの上の男が弾かれたように起き上がった。

「なんだ!お前ら!!」


「…………俺らの連れに何してんの、あんた」


淡々とかえし、俺はかずに歩み寄った。


「なん……………………うおっ」


翔がチカラで、男をかずから引き剥がし、放り投げた。
リビングの机に激突し、男は変な声をあげ、派手な音をたてて倒れた。


かずの傍らにしゃがみ、手首の紐をとく。
細い手首からは、血がにじんでいた。


「…………お……のさん?」





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