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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~

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Kazu



ずっと夢をみてた。

悲しいんだか寂しいんだか、理由はよくわからないけど。

夢の中で俺は、ずっと泣いてた。

多分、泣くことを我慢してきた日々が多かったからかもしれないな。

悲しくて苦しくて………誰か助けて………って思って、我に返る。

そうして目を開けると、たいてい大野さんが困った顔で枕元に座ってた。
柔らかい声で、大丈夫だよ、と囁かれ、大きなあったかい手で手を握られる。
すると、その時だけ安心できて、ふっと眠りにつけた。

またあるときは、翔が座ってた。
俺が目を開けると、心配そうに水分補給のストローを差し出してくれた。
焼けついた喉に、とても美味しかった。

無理がたたった身体に、クスリと激しいセックスは、相当なダメージだったようで、俺は、なかなか回復しなかった。
加えて、食べることができなかったのも災いした。
大野さんたちは、俺を、病院にかつぎこむことも考えたらしいが、身体に残る情事の跡に、つっこまれても困るから、やめた、とか。


3日間下がらなかった熱は、4日目の昼にようやく、落ち着いてきて。

でも体力の限界を越えていた身体は、まったく使い物にならず、食事もトイレも大野さんと翔に頼りきる羽目になった。



「ほら、もう1回口あけろ」

翔さんが、れんげですくったお粥を、フウフウとしながら命じる。

翔が、自分より年上だと分かった以上、呼び捨てはできない性分な俺は、目を覚ました時から、翔を翔さんと呼び変えた。
童顔だから、絶対タメか下かと思ってた。 

翔さんは、一瞬目を丸くしたが、俺が自分の年齢を告げると、どっちでもいいのに、と笑った。


「ごめん…もういらない」

ベッドに大きなクッションをおいてもらい、もたれて座る俺。

握力すらおちてるから、危なっかしくて見てられない、と、お椀を取り上げられ、餌をもらうひなのように、食べさせてもらっていたが、三口食べたところで、首を振った。

「はあ? そんなん言ってると、永遠に寝たきりだぞ、お前」

翔さんが、れんげをぐいっと口元に差し出してきた。

「ほら」

「…………」

しぶしぶ小さく口をあけたら、カポっと無理矢理押し込んでくる。
それを、傍らで見てた大野さんが肩をゆらして笑った。

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