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キラキラ

第12章 ほたる ~バースト2~

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あれから、一年がすぎた。

あの日以降、約束通り親にハガキを書き、制服と教科書をとりに帰った俺は、そのまま大野家の居候でいる。

驚いたことに、両親は離婚もしないで、まだ二人で暮らしているらしい。

そんな両親は、俺の高校の学費も支払いを続けてくれているし、時々俺の口座にお金を振り込んでくれている。

俺は、その振り込まれたお金は、全部大野家に渡している。
智さんは断ったけど、ケジメだと、無理矢理渡した。
きっと、親もそのつもりだから。


1度、智さんが俺の母親に会いに行ったって言ってた。


帰りを待っている、と伝えてという伝言を携えて、智さんは帰ってきた。

智さんは、お母さん綺麗な人だね、と言った。

俺は、そうかな、と呟き、智さんにお礼を言った。


人の心はかわるから……って、智さんは言ってたな。
帰ろう、と思える日は来るのかな…。






「ごちそうさま…………」

時間は三時半をまわっていた。
もうすぐ、翔さんが帰ってくる。
手つかずだったら、怒られちゃうから、翔さんが、作りおいてくれていた昼御飯を、遅いながらも少し食べて、ソファに寝そべった。

昨日から調子が悪くて、今日は学校を休んだ。

朝、俺に微熱があることをいち早く見抜いた翔さんは、無理すんな、と俺を無理矢理ベッドに追い返して。
大丈夫か、と優しい声をかけてくれる智さんにこくり、と頷き、行ってらっしゃい、と送り出して、朝からずっと眠っていた。


おかげで、少しましになったみたいだ。


ふう…………とため息をついて、天井を見る。


父親のような、深い愛情をくれる智さん。
兄のような、温かい思いやりをくれる翔さん。


二人とも大野さんだから、半年前に、智さん翔さんと、呼び方をかえた。
ちょっと照れてた智さんは、可愛い。

その智さんには、今でも時々抱いてもらってる。
嫌な夢をみて、自分を見失いかける夜が、いまでも時々あって。
仕方ねえな、と困ったように笑う智さんに、優しくゆさぶってもらうと、自分の存在が確認できる気がして、心が安定するから。

精神安定剤みたいなもんなんだよね。
智さんの恋人には申し訳ないけど……。

会ったことのない人物に詫びるのだ。

惚れてはないよ、と。


一人、くすりと笑ったその時。

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