キラキラ
第13章 ミチシルベ
松本くんは、へへっと笑い両手で髪をかきあげる。
「…………うん。ありがと。元気出た」
「…………それは良かった」
それでも、やっと出た松本くんの笑顔に、ほっとした。
こればかりは、自分で切り広げていかないといけないことだから。
話は聞いてやるし、気持ちにも寄り添うことはできるけど。
(……抱き締められるのは、照れるから勘弁してほしいぞ)
温もりの残る自分の体を、両手で抱きながら、ようやく落ち着いてきた頭で思う。
大きくて広い胸だった。
不覚にもドキドキしてしまった。
再会のキスといい、スキンシップの好きな子だ。
(………俺だからいいけど、他の先生にもこんなことしてんのかな……だとしたら……嫌かも)
そこまで、つらつら思い、はた、と我に返った。
…………嫌?
なんで?
…………つか、俺自身はいいのか?
…………なんでだ?
自分の感情を整理しきれず、俺は、戸惑った。
何事もなかったように、「顔、洗わなきゃな…………」と鼻をさわる松本くんが妙に可愛い。
「…………」
「先生?」
固まった俺に、松本くんが不思議そうな顔をちかづけてきた。
俺は、ゆっくり息を吐く。
「…………メシ。行こうか」
「…………うん。ごちそうさまです」
「は?奢る、なんていってないぞ」
「えー?いいじゃん」
松本くんが、笑いながら、じゃれついてくる。
俺もはははっと笑って、屋上出口に歩を進めた。
大事な部下。
それ以上でもそれ以下でも…………ない。
はず。
***** ***** *****