キラキラ
第13章 ミチシルベ
ひとしきり笑ってから、先生は、独り言のように呟いた。
「……………すっごい………気持ちよかった」
頬を染め、そんなことをいう先生の唇は艶めいていて。
俺の方が恥ずかしくなった。
かあっと顔が赤くなったのが自分で分かった。
この人、自覚あんのかな?
上目遣い、すっげーヤバイんだけど。
分かっててやってたら、たち悪いぞ!
俺はドキドキしながら先生の方に身を乗り出した。
気になることがひとつある。
俺ばっかり好きじゃ、意味がないんだ。
「あの…………先生。ひとついいですか」
「ん?」
「…………付き合ってくうちに俺を好きになってくれますか」
櫻井先生は、目を丸くしたあと…………、にこりと微笑んだ。
「多分…………もう好きだよ。おまえのこと」
「…………」
もうダメだ…………。
はあ……………と知らずため息をついて、髪をくしゃりとかきあげた。
どんだけ可愛いこと言うんだよ……!
「松本くんにキスされたり、抱きしめられたり。全然嫌じゃなかっ……………」
遮るように、俺は、腕を伸ばして先生の華奢な体を力一杯抱き寄せた。
「……………先生」
「…………うん」
「好き…………」
「…………うん」
先生のうなじに顔をうずめる。
素肌は、しっとりとしていて、先生の香りがした。
右手でゆっくり先生の後頭部をささえ、少し体を離すと潤んだ目と目があう。
ゆっくり顔をかたむけると、先生が静かに目を閉じたのが分かった。
何度か角度をかえて、ついばみ、先生の口が少し開いた瞬間を見極め、深く口づける。
「…………う………ん…っ」
先生が甘い声をあげる。
俺は、先生の後頭部にまわした手に力をこめた。
その時。
ピーンポーン
「…………!」
「…………」
甘く染まりかけた空気を突き破るように、間抜けな、インターフォンが鳴り響いた。
パチリとお互いに目をあけ、唇を離した。
「…………ラーメンがきた」
俺が掠れる声で呟くと、どちらからともなく笑いがこみあげる。
「ふふっ…………」
「はははっ…………」
俺は、笑いながら傍らにおいていた鞄から、財布をつかみ立ち上がった。