キラキラ
第13章 ミチシルベ
いいところを邪魔されたのは、ちょっびり残念だが、のびるまえに美味しく食べよう、と、散らばったローテーブルの上を慌てて片付けて、並べて置いたチャーシュー麺二つと餃子二人前。
ソファからおりて、直にフローリングに座り、仲良く割り箸を手にした。
美味しそうなラーメンの匂いに、腹が減ってることに改めて気がつく。
「うまそ」
「ここのラーメン、まじウマイですよ」
「本当?いただきまーす」
手をあわせて、さあ、食べよう、とどんぶりに手をかけると、いきなり櫻井先生は、メンマをつまんで、ポイ、と俺のにいれた。
「…………苦手なんだ」
いたずらっぽく笑う櫻井先生に、俺は、ふふと笑って、それを口に放り込んだ。
「俺、これ好きです」
「ちょうど良かった」
櫻井先生は、言いながら、ちょっとだけ顔をしかめた。
「? まだ何か嫌いなものでも?」
子供みてぇ。
などと、のんきに聞き返したら、先生は、ゆるく首をふってから、手の甲を額にあててうめくように、いてえ…………と呟いた。
「痛み止めきれてきた…………」
「あ。傷ですか?」
「んー。今、ズキッてした………」
情けないというように呟く櫻井先生に、俺も苦笑して、真っ白いガーゼをまじまじと見た。
「………けっこうスパッといってましたよね…綺麗にくっつくといいけど」
言いながら、自分が処置した、櫻井先生の傷口を思い出す。
とにかく必死だった。
櫻井先生だから、あんなに緊張したんだろうなあ。
……………やっぱり好きな人の手当ては二度とごめんだ。
心に決めていると、痛み止めの薬を鞄から、出しながら、櫻井先生がにっと笑った。
「変な傷跡が残ったら、松本くんに責任とってもらおうかな」
「いいですよ」
俺は、先生に水を用意するために冷蔵庫にむかう。
グラスを手にして、ウインクしてやった。
「その時は、責任とって先生を嫁にもらいますから」
「……………」
先生が、虚をつかれたように目を見開いて、それから赤くなった。
可愛い!!
俺は、あははっと笑った。