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キラキラ

第15章 1000回言って

ライブ前のスイーツタイムの時だったか。

メンバーの呼び名の話になり、相葉さんが言ったんだ。

「翔ちゃんってさ。潤ちゃんと二人っきりのときでも、翔くんって呼ばれてんの?」

ちょうど、チーズケーキを口に入れた翔さんが、一瞬素の顔になり、それからぶわっと赤くなったのが可愛くて、他の四人で大笑いした。

「なんだよ。別に赤くなるとこじゃないじゃん」

オジサンにつっこまれ。

「かーわいー!」

相葉さんにいじられ。

「思い出したら恥ずかしくなった?」

俺が追い撃ちをかけた。


潤くんは、フォークでチーズケーキを刺しながら、チラリと目をあげ、俺らを見回してふふっと笑った。


「俺、翔くんのこと、「翔くん」としか、呼んだことないよ」


「うわ!絶対うそ!」


相葉さんが悲鳴のような声をあげた。


「なんでだよ。じゃあ、そっちはなんて呼んでんだよ」


余裕の笑みで、潤くんがかまをかけてくるから、
えっとねー。と、相葉さんがまんまとひっかかって暴露しそうになり、


「相葉さん」


あわててとめた。


「なに?」


「なに?じゃない。余計なこと言わなくていいから」


「ほら、みろ。言わないくせに」


潤くんがクツクツ笑う。

俺らのわちゃわちゃをよそに、翔さんが、茹で蛸のようになって、黙ってかきこむようにチーズケーキを食べてるのが、とにかく可愛くて、俺は、オジサンと顔をあわせて、笑った。




……………そんな経緯があり。


潤くんは、翔さんの特別で。
翔さんは、潤くんの特別だから。

俺は、潤くんの「翔くん」以外の呼びかけを聞いたことがなかったんだ。




「……今、翔さんって言った?」

思わず確認してしまう。

「なに?」

「なんか。翔くん以外の呼び方新鮮だね。二人の時は、翔さんって呼んでるの?」

ぽつりと言ったら、

「え?俺、翔くん……なんて呼んだことねえじゃん」


潤くんが、ちょっと赤くなって、大真面目に答えた。


………………え?

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