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キラキラ

第15章 1000回言って

たかが呼び方。

されど呼び方。


相葉さんに、「二宮」って呼び捨てされるだなんて、いまだかつてなかったことだ。

しかも愛情をこめていわれたわけじゃない。
その他大勢扱いされたような、クラスメイトに投げられたような、そんな声音で。



なんだかな。


予想以上にくるものがある。




まるでがんっと壁を作られてしまったような、そんな気さえしてしまうほど、相葉さんを遠く感じてしまうのは、何故だろう。




ね、わざとなの?


翔さんと一緒になって、俺をからかって遊んでる?




「……相葉さん」


もう一度名を呼ぶ。


「ん~?」



鞄から台本やらスマホやら取り出し始めた相葉さんに向けて、願うように声をかける。



「…週末っていってたけど。今日は、これるの?」



「……へ?どこへ?」



相葉さんが不思議そうに俺を見やった。


ドキンと心臓がなった。



「どこって……………俺んち」



「え?なんで、俺が二宮んち行くの?」



相葉さんは、えー?っておどけるように笑って、翔さんを見た。
翔さんも、新聞から顔をあげ、くすっと笑った。


……………俺は、文字通り石になった。


………なんだ、この人。



「ふざけんな。こっちは、真面目にきいてんだけど?」


ぼそぼそと責めてみたら、


「は?ふざけてねぇよ。おまえんち行く意味がわかんねぇ」


心外だ、と、いうように目を丸くして言い返された。



「……………なにいってんの?」


「おまえこそなに?」



俺から笑顔が消えたのが、自分で分かった。


だって、………分かる。


相葉さんの顔みたら、本心か本心じゃないか、くらい分かる。
何年も一緒にいて、しかも恋人なら、なおさら、だ。



相葉さんは、本気で言ってる。





相葉さんが、冗談でもなんでもなく、俺に疑問をぶつけてる。




なんで?




混乱してきた。





……なにこれ?





「…相葉さん?」



「なんだよ」



普段は恥ずかしいからこんなこと絶対聞かない。
でも、聞かずにはいられない。



「……俺たち、恋人だよね?」



願うように聞いたセリフは、



「………は?俺たち男ですけど?」



一番聞きたくない理由と、一番見たくない表情で否定された。






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