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キラキラ

第15章 1000回言って

そのあとの撮影は、さんざんだった。


どう頑張っても笑顔がつくれない俺に、スタッフをはじめとする周りは戸惑い、しまいには、あきれた翔さんに怒られる始末。



「……いい加減にしろよ、二宮。何が気に入らないのか知らねえけど。プロだろ。お前」



真剣な色をした大きな目で諭されて。


分かってる……………。
分かってるんだけど。


気を抜いたら泣きそうなんだ。
俺は、小さく深呼吸をした。



隣で、相葉さんも心配そうに見つめてくるから、俺は、その視線から逃げるようにうつむき、すいません、といった。


「……………ちゃんとする……………ごめん」



でも、変な相葉さんの隣に立ちたくなかった。
もっといえば、翔さんだっておかしいから、できたら、二人に近づきたくなかった。


なのに、要求されるポーズは、三人くっついて笑顔、とか。
仲良しなグループを演出させるものばかり。

普段ならなんにも思わない距離感も、今の俺には地獄でしかない。
相葉さんに肩を抱かれるのが、一番きつかった。

ずっと会いたくて触れてほしかった相手に、関係を否定されるなんて。
仮に、冗談だとしたら悪趣味すぎる。


……………自分の身に何が起きてるんだか、分からない。



俺、相葉さん怒らせた覚えなんかない。


「二宮」なんてフツーに呼ばれる覚えなんかない。


にの……………って呼んでよ。
お日様みたいな顔で、俺だけを見てよ。


背中から伝わる相葉さんの温もりに、また泣きたくなった。


俺より高い体温。
広い胸板。
首筋からほのかに香る香水でさえ、いつもとなにひとつかわらないのに。


「いーよー!三人もっと寄って笑って!」


カメラマンの言葉に、相葉さんが覆い被さってきた。目の前には翔さんの頭。


二人に挟まれるような格好で、俺は、死ぬ気で笑顔をつくった。




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