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キラキラ

第15章 1000回言って

「二宮さ、このあと時間ある?」

収録を終えて、帰り支度をしている俺に、Tシャツを勢いよく着ながら相葉さんが声をかけてきた。


「え……」


「ちょっとさ、俺んちおいでよ。飯一緒に食お」


手が止まった。


え?!


鏡を見てた潤くんが、鏡越しにこちらをみてにやりと笑ったのが分かった。
俺は、ゆっくり相葉さんを見上げる。


「おまえ、自分に無頓着だからなあ…………飯とかいい加減ぽいし。リーダーにも、今日は二宮を一人にしない方がいいって言われたしさ」


は?!


思わず大野さんを見たら、大野さんは涼しい顔をして、スマホを触ってる。
そして、視線を画面におとしたまま、ふっと肩で笑った。


「雅紀のうまい飯食って、元気もらってこい。おまえ、最近目が死んでるから」


「…」


嬉しいのか嬉しくないのか、自分でもよく分からない。
複雑な顔をしていたのだろう。
潤くんが、なんでもないことのように背中をおしてくれた。


「いいじゃん。ついでに泊まってきたら」


「ああ、別にいいよ?」


傍らの相葉さんが、笑顔で同意する。


別にいいって……


そんな、簡単に事を進めることができるということは、裏をかえせば、何の感情も俺に持ってない、と言い切られたようなもんだ。


分かってるけど、小さく胸が痛む。


家なんかに行っちゃうと、また思い知らされるんだろうな。

ここの俺らは恋人なんかじゃないって。

相葉さんと二人きりになったら、その現実に何度も打ちのめされるんだろう。



だけど、相葉さんちに行ける。



この事実は俺に大きかった。


傷つくかもしれないけど、今よりもっと辛くなるかもしれないけど。
でも……………相葉さんと一緒にいれる。


「うん。行く」


頷いて、上着を着た。
チラリと鏡をみたら、潤くんが男前なウィンクをしてくれた。
相葉さんに片想いをしていることになってる俺。


潤くんからしたら、頑張れ!の意味もあるのだろう。



でもさ。

ノンケなやつと恋人同士になろう、なんて本当は正直むずかしい話だよ。

もとの世界の俺らも、潤くんたちも、いい関係作るまでにすごい時間を費やしたもの。


だけど、それを言っちゃうと、ここの潤くんの想いも否定するみたいで口にはだせない。
潤くんは、頭のいい人だから、分かってるだろうけどね。

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