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キラキラ

第15章 1000回言って

久しぶりの相葉さんの運転。

助手席に、ちんとおさまった俺は、ほんの一週間かそこらのことなのに、すごく懐かしい思いで、フロントガラスを見つめていた。

最小限におさえられた小物。車内の香り。

相葉さんのブレーキを踏むタイミングや、運転のくせなんか、まんまそのままだ。

恋人かそうじゃないかという点さえ、おいておけば、もとの世界と何らかわりはない。


「酢豚作ろうかと思ってるんだ。二宮好きだっけ?」


「……………うん、好き」


あんたが作るものなら、なんだって大好き。

つか、そんなスゲーもんつくれんだ。
この点は、向こうの相葉さんと違うかもな。


ふふっと笑って、相葉さんをみたら、予想外に優しい顔をしてこちらを見つめてたから、ドキリとした。


「……………なんだよ」


運転中だろうがよ。前向け、前。


「うん。なんか、やっと笑ったなあって思って」


「……………」


「ここ数日、おまえ変だったもん。なんか、無理してるっていうかさ。俺、なんかした?」


なんか、したどころじゃねんだよ! ばか。


……………なんて、いえるはずもなく。


「いや、ちょっと体調がずっと悪くて……………」


と、ありきたりな言い訳しか思い浮かばなかった。


「だからか。翔さんもリーダーも心配してたから……………」


赤信号でゆっくりブレーキを踏み停車してから、相葉さんは、にこりとして、こちらをみた。

「ちゃんと飯食って、元気になんなきゃね」

邪気のないガラスのように澄んだ瞳を細めて、優しく笑う笑顔が、心に染みる。


「ありがと」


たとえ恋人ではなくたって、今は俺だけを見ていてほしい、と、願いながら、俺は、ふわりと笑んだ。
暗闇の中、相葉さんの顔が、赤くなったような気がしたのは、きっとテールランプに照らされたせいだろうけれど。
それでも、照れたようにくふふっと漏らした笑い声を、愛しい、と、思った。





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