
キラキラ
第15章 1000回言って
「二宮、俺んち初めてだっけ?」
到着した自宅マンションの鍵をガチャガチャしながら、相葉さんが呟く。
思わずずっこけそうになった。
………な、わけあるか,ばーか。
心で突っ込みながら、俺は苦笑いだ。
でも本当のことなんか言えないし通じない。
俺は、ぼんやりとした言い回しで、ちょっと否定しとく。
「……………前に何回か来たことあるじゃん」
「あれ。そうだっけ?」
「うん」
ただのメンバー同士という設定の俺らは、普段あまり家に行き来はしてないのだろうか。
デビュー前からのつきあいがあるはずなのに、いったいどんな関係になってるんだろうな。
……………少しだけ興味がわく。
相葉さんは、ドアを開き、いらっしゃーい、と、いって俺を招き入れてくれた。
「お邪魔します……………」
ちょっと緊張しながら玄関に足を踏み入れる。
よく知る相葉さんちの匂いに包まれ、言い様のない安心感がうまれた。
こんなところは何もかわってないんだな。
意外と几帳面なあいつの性格は、玄関にも、あらわれている。
綺麗に並べられたスニーカーやブーツ類を懐かしく見ていると、
「二宮ー?入っといでー?」
玄関で佇んだままの俺に、先にリビングに行っていた相葉さんから声がかかった。
うん、と返事をして俺は、靴を脱いだ。
「適当に遊んでてね」
相葉さんは、キッチンで、ガサガサいろんな音をたてながら、ソファーを指差した。
俺は、上着を脱ぎながら、相葉さんちのソファーに歩み寄った。
深い緑色をしたレザーのカウチソファー。
座り心地がよくて俺が相葉さんちで、大好きな場所。
二人でここに座って酒を飲んだり、ゲームをしたり。
いちゃいちゃしたり……するんだ。
俺は、軽くため息をついて、ソファーに座った。
傍らの黄色いクッションを抱き込んで、膝を抱えて。
ぐるりと部屋を見渡した。
さあて…間違い探しでもしよう。
見た感じはなにもかわらないけどなあ。
床に無造作に転がってるテレビゲームには見覚えがあるし。
でも、そういや、俺が持ち込んでたコントローラーや、ソフトの類いは見当たらない……かな。
俺の部屋から相葉さんのものがなくなってたのと同じで。
俺の持ち物は、この部屋から綺麗に消え失せてた。
