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キラキラ

第15章 1000回言って

「………ごめん、間違えた」


相葉さんの首から腕をとき、ヤバイ、とばくばくする心臓をおさえて、淡々と否定した。

変に焦ってもおかしいし、改めて告白する場面でもないだろう。

「あいばさん」って口走ってしまった気もするけど、ここは押しきれ、俺。



「な……………なんだ。間違い?びっくりするじゃん」



相葉さんが唇をおさえて、赤くなり焦ったように笑う。
そして、いたずらっぽい目になった。


「なに。イイコトする夢みてたんだ?」


「………まあね」


「誰と?」


「内緒」


ごまかし笑って起き上がろうとしたら、相葉さんに腕をひかれた。


「ご飯できたよ」


大きな手のひらに触れられ、そこが熱を持つ。
もっと触れて、って思いが溢れだしそうになって、必死で唇をかんだ。





相葉さんの手料理は久しぶり。

酢豚や中華スープが並ぶ食卓は、豪華絢爛だ。

思わず、


「うまそ」


と呟いたら、


「うまいよ?」


と、つっこまれた。

グラスに注いだお茶で乾杯して箸をつける。

最近、胃も痛くて、家では、小動物なみの食事しかしておらず。
相変わらず牛乳なしのシリアルしか食べてなかったし、仕事中にでる弁当なんかは、手をつけることはなかった。

相葉さんの手料理以外口にいれる気になれないって、ずっと思っていた。



箸でつまんだ、つやつやの人参を口にいれる。


甘酸っぱくて、温かい。



「美味しい…………」


「でしょ?良かった~」


相葉さんもニコニコして、パクパク食べ始めた。

酢豚は最近、覚えたんだーって言いながら、笑う相葉さん。


人参をモクモク咀嚼しながら、胸がいっぱいになってきた。


相葉さん……………



「………二宮?」


戸惑う相葉さんの声。


「……………」


「……………泣くほどうまいの?」


ポタポタとテーブルに涙がおちた。
一回溢れだした涙はとまらなかった。


「……………っ…………く」


箸を握りしめて思わず下をむく。
肩を震わせて、声が出るのを我慢するので精一杯だった。
ポタポタ落ち続ける涙。

とまらない。

我慢し続けてた思いが、相葉さんの作ったご飯で、溢れでた。


「……う………うっ………」


相葉さんが、戸惑うように箸をおいて席をたったのがわかった。











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