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キラキラ

第1章 アーモンド

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S

「…えーっと…」

扉がしまり、誰の気配もなくなったことを確認して、のそっと起き上がった。

震える手で、唇に触れる。

(今のは…キス?)

パニックという言葉が、まさしくあてはまる今の俺の状態。
心臓がばくばくいってる。


智くんがブランケットをかけてくれた時点で、意識は浮上してた。
でも、もう少しウトウトしていたいな、という気持ちと、俺の寝顔を見ながら、あーだこーだ言ってる二人がおかしくて、もうしばらく狸寝入りを決め込んだんだ。

「子供みたいだね」
柔らかい笑顔が脳裏に浮かぶ、智くんの優しい声。
「だね」
潤の声も穏やかで。

子供って…って、苦笑しながらそろそろ起きようと、薄目をあけたら、こちらを見据える真っ直ぐな視線を感じて、あわてて目をつぶった。

(いや、目をつぶる必要ねえよな…)

自分にツッコム。

「松潤、翔ちゃんに穴があくよ」
くすくす笑う智くんの声に、潤も笑った。

なんだか、起きそびれた…。

タイミングをはずしたまま、智くんが出ていく。

残されたのは、潤と俺。

マジで起きようと思うのに、なんだか、じっと見つめられてるみたいで。

(うーん……起きづらいなあ)

そのうちに、潤が苦しそうに顔をおおった。

(何……?なんだよ)

「マジなんだよ…」
ため息とともに、はきすてられる声。

さっきとはうってかわって、なんだか追い詰められたような声音に、ますます身動きが、とれない。

……そして。

俺の髪に潤の手が触れた。
そして、そのまま頬にそえられる。

俺は動けない。
いや、動いちゃいけない気がして。
不自然なくらいにじっとしてた。


小さな小さな掠れた声。


え?なんていった?と思った次の瞬間、唇がかさねられてた。

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