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キラキラ

第19章 バースト3


「潤は、ミステリー好きなのか?」

くるん、と椅子をまわしてこちらを見据え、翔がたずねる。
もともと好きだけど、購入してまで、読んでたわけではなかったから、翔の部屋の品揃えにわくわくしてるのは事実だった。


「まあね…お薦めってある?」


「……うーん」


翔はちょっと考えて、人差し指を、上に向けてくっと動かした。
すると、本棚から、すーっと一冊出てきて、ふわりと翔の手元におさまった。

翔は、パラパラめくりながら、俺の横にすとんと座り、これ面白かった記憶があるなあ、と差し出した。

「へえ……」

と、言いながら受けとる。
聞いたことがある作家だった。

「最後、すげぇどんでん返しがあるんだ」

隣で、説明してくれる翔。
風呂に入ったあとだから、シャンプーの匂いがふわりと漂ってくる。
シトラス系のそれは、すごく爽やかで、俺の好みの香りだった。
もちろん、風呂に入ったとき同じものを使わせてもらったから、俺の髪からも同じ香りがする。

そう。同じ香り、というだけで、なんだかドキドキした。

ざっくりした大きなTシャツを着てる翔の首もとは、真っ白で、

「他に何かあったかなあ…」

と、本棚を見上げて思案する、顎から首にかけてのラインは、なんだか艶かしかった。

つまりは、色っぽいのだ。
野郎のくせに。


「潤?」


モヤモヤしてる俺の目の前に唐突に翔のドアップ。


「わっ!」


ドキリとして飛び上がった。
自分の考えを読まれたかと焦る。


「わ、じゃねえよ。聞いてた?」


苦笑する翔に、曖昧に笑いかえした。

そうだ。テレパスは、かずだった。
大丈夫大丈夫。


「あ、聞いて……」



同時に、キンという音とともに、目の前が白くぼやけてきた。
胸がドキッとした。


やば。


「……翔…」


すがる目で翔の姿をさがしたら、一瞬固まった翔が、瞬時に事態を把握した。


「……はあ?!いまのどこに、跳ぶ要因があんの?おまえ」


「わかんない……」


翔にドキドキしてました。それを見破られたかと思いました、なんて。
言えるわけねえだろ!






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