キラキラ
第2章 ねがい星
メイクを終え、おはようございますー、とスタジオ入り。
今日一緒に仕事をする、という相手をその場で紹介された。
金髪碧眼の小柄な可愛らしい女性が、ペコリと礼をする。
こちらも、営業用の笑顔で会釈を返す。
隣にいた、ハーフっぽい背の高い筋肉質な男前が、よろしくお願いします、と手をだしてきた。
「……あ、よろしくお願いします」
つられて手をだすと、そいつは、俺の手をぎゅっと握ってきた。
(………………)
ただの、握手とは明らかに違う力加減に、何故だか背筋がぞくっとした。
本能的に、いやだ、と感じた。
(ぜってぇー、早く終わらせよう…)
心に決めた。
まずは、女性との撮影。
要求されたのは、清純、爽やか、初々しさ。
恋人繋ぎをした手のアップ、後ろからのハグ、腕を組んで歩く……
終始リラックスしたムードで、笑いを織り混ぜながらの撮影に、ホッとする。
雑誌では、ピントはすべて俺にあわせてあるそうだ。相手はぼかす感じに仕上げるって。
結構、可愛い子なのにもったいないな、と思う。
「はい、じゃあ、次行きます」
男性……筋肉マッチョとの撮影。
(これは……どうみても、受け身な側だよな、俺)
要求されたのは、秘密、大人、妖艷。
いきなり、腰を引き寄せられて、ドキリとする。
さっきとちがい、リードされる側にまわる。
ところが。
(………っ、どこ触ってやがんだっ)
こいつ、カメラから見えない位置で、やたら、体に触れてくる。
胸元の、隙間から手をつっこまれたときは、一瞬手が上がりかけたのを、なんとかやり過ごした。
「あ、二宮さんその表情いいよー」
(うるせーなっ)
こうなったら、さっさと、終わるしかない。
我慢に我慢を重ねて、やっと撮影も終盤。
「最後、キスできる? 真似でいいから」
(はぁ!?)
カメラマンからの無茶ぶりに、返事もできないまま俺は硬直した。
「はい」
ところが、筋肉マッチョは、あろうことか頷いて、カメラから俺を隠すように顔を傾けた。
見えないように、してるフリ。
……のはずが。
「はい、いいよー」
という声に、体を離す間際、本当に唇を重ねてきやがった。