キラキラ
第2章 ねがい星
長い時間をかけて着替える。
ただでさえ疲れていたのに、追い撃ちをかけるような出来事に、心身共に限界だった。
着替えてからもしばらくソファーに座り込み、ようやく少し落ち着いて、帰ろう、と控室の扉をあける。
その前に佇んでいた人影に、ギクリと立ち止まった。
「あー……やっとでできた」
嬉しそうな顔で、いじってたスマホから顔をあげたのは、さっきのわけわからない男性モデル。
名前すら忘れた。
「そんな顔しないでよ」
「…………」
無視して歩き始めた俺の後ろを楽しそうについてくる。
「ねえ、俺、二宮さんのこと気に入っちゃったんだ。今日ご飯いかない?」
「…………」
ガン無視で、歩く。
「ねえ」
がっと腕をつかまれた。
口調とは裏腹に、乱暴に。
「…………なせよ」
「今夜。暇でしょ」
「離せ」
無理矢理腕を振り払おうとしたけれど、そもそも体格からして違う。
そして、今日の俺は、いつも以上に体力がない。
ギリギリとつかまれる腕に顔をしかめた。
「てめぇ……なんのつもり……」
「言ってんじゃん。二宮さんと出かけたいだけだよ」
腕が痛い。
頭も痛くなってきた。
思考がとまりかける。
…………と。
「おまたせ」
耳馴染んだ柔らかい声と共に、大好きな香りが鼻先をかすめたかと思ったら、一瞬で掴まれてた腕が自由になった。
「…………」
スッと体の位置を入れ換えられ、俺をモデルから遠ざけてくれて。
温かい手で肩を抱いてくれてるのは。
「あ……いばさん……」
「遅いから迎えに来たよ」
ニコッと笑って、肩を強く抱きしめてくれる。
「あ、ニノは、俺との先約あるから、ダメだよ」
相葉さんが、優しく、行こうって促してくれて、震える足を前に出す。
突如現れたやつに、あっさりと俺を奪われ、モデル男が、慌てて叫んだ。
「じゃあ、二宮さんまた次の機会に!」
「次なんてないよ」
相葉さんはくるっと振り向いて、冷たく切り捨てた。
そして、見たこともない無表情な顔で、言い放った。
「それでも、こいつにつきまとって、手をだそうものなら、俺は、全力でお前を潰すからね」
さらに、ピシャリとつけ加える。
「言っとくけど、これ、俺のだから」
相葉さんの腕の中で、視界がぼやける。
泣いたらだめだ、と唇をかんで、耐えた。