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キラキラ

第2章 ねがい星

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A


ニノが、泣く寸前の顔してるから、敢えて何も聞かない。

それでも、行き先は決まってるから、行こう、と促すと、押し黙りながらも素直についてきた。

車に乗っても、発進させても黙ってるから、ちょっと心配になる。
大丈夫かな、と思って、ハンドルを握ったまま、左手を、そっとニノの右手にのせてみた。
そしたら、するっと恋人繋ぎの指にしてきたから、ちょっと安心した。


俺のマンションに到着すると、ニノは、黙ったまま、ソファーのいつもの定位置に、座った。
キッチンから、なるべく明るく声をかけてやる。

「ジュース?それともアルコール?」

「酒」

小さい返事。

ようやく、声が聞けたことに、安堵する。
冷蔵庫から、二缶、ビールを手にとり、棚からピーナッツの袋を掴んで、ニノの隣に勢いよく座った。

「はい」
「……ありがと」

満面の笑みでビールを手渡すと、ちょっと笑ってくれた。

「ねえ、ニノ」
「……ん?」

プルをあけ、缶に口をつけたままこちらを見るニノに、会話する元気が戻ったみたいだ。
(良かった……)
意地っ張りで、弱音なんか、めったにはかないやつだから。
もっともっと甘えてくれてもいいのにな、と、俺にしたら、もどかしさが募るけど。

大体にして、さっきニノを困らせていた、ガキは誰なんだって、いまだに疑問だし。

「今日の撮影はどうだった?」

「………」

ニノは、その問いには答えなかった。
かわりに、

「……相葉さん、なんであそこにいたの?」

ちょっと首をかしげて、こちらを見る。
俺は、スマホを指差して肩をすくめた。

「だって。今から行くって連絡くれたじゃん?」
「……うん」
「俺も、ちょうど帰り道だったからさ。ニノの今日の仕事覚えてたし、拾えたらいいなって、立ち寄ったんだよ」
「……そっか」

いいかな。聞いても。
……大丈夫かな。

「あれ、誰?」

ニノは、一瞬動きをとめたけど、

「……今日の撮影の相手」

嫌そうに言うところをみると、なんかあったんだ、と確信する。

(やっぱあん時、シめとくべきだったな……)

物騒なことを考え、密かに後悔する。

「相葉さん」

ニノがポツリと名を呼んだ。

「ん?」

「……キスしてよ」

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