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キラキラ

第20章 🌟🌟

自慢じゃないが、俺はダンスが得意だ。
小さい頃から、ミヤと遊びながらたくさん踊ったから、体の使い方も、ステップもバッチリだ。


だから、舞踏会などで、他の国の王子に一曲申し込まれた場合。
最初の四小節くらいで、「こいつへた」とか、「……まだマシかな」、とかが分かる。
へたなやつにあたった時なんか、足踏まれるわ、腕抜けそうになるわで、マジ悲惨だからなあ。


……で。


今、俺が相手をしてやってる、こいつ。
松の国のジュンは、間違いなくレベルが高かった。

緩急つけながら巧みにリードされる。
長い指をからめられ、腰に優しく手を添えられ。

ただの手の早いエロ王子と思っていたが、ちょっと違うかもしれないな。


気分よく広間をくるくる踊っていると、周囲から感嘆のため息が聞こえた。
やはり、サトコさまは、お美しいだの。
あの王子は松の国の長兄か。凛々しくなられた、だの。


途切れ途切れに聞こえる会話に耳をそばだてながら、くるりとまわったら、窓際にいたジュンイチと目があった。


ショウ王子と二人で、優しい笑顔をこちらに向けている。
それがなんだか気恥ずかしくて、ふいと顔をそむけたら、じっと俺を見つめている、ジュン王子の大きな瞳にきがついた。


「姫……綺麗です」  


至近距離で囁かれる。
色っぽい低音。
女ならイチコロだな。


そりゃ、どーも。と、たんたんと返事したくなるのを我慢して、

「……ありがとうございます」

と、ふわりと笑ってやった。


ジュン王子は、腰にまわした手にぐっと力をこめて、俺を抱き寄せた。


「この間の、あなたの蹴りききました。もう一度していただきたいなあ……」


ぶっ!!


Mかこいつは!!


「………それはちょっと」


思わず、まじまじとジュンを見てから、恥ずかしそうにみえるようにうつむいてやると、彼はいたずらっぽく笑った。


「華奢なのに、男性並みにある力のギャップに、ますます好きになりました」


「……っ」


瞬間、俺は、思わずステップを間違え、慌てて踏みかえた足を、盛大に滑らせた。
ドレスの中で、左足が変な風にまがって、ヒールをはいた足首が、くきっと鳴った気がして……。



動けなくなった。

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