テキストサイズ

キラキラ

第20章 🌟🌟


「……った……」


「……姫?」


俺が小さくもらしたうめき声とバランスを崩した体に、ジュン王子は即座に反応した。


「……体の力をぬいてください」


低く耳打ちされて、痛みをこらえながら言われた通りにする。

くじいたらしい足は、ズキズキして床につくことが困難だった。
ジュン王子は、俺の腰にまわした手によりいっそう力をこめ、ドレスで足下がみえないのをいいことに、片足がついてなくてもあたかも踊っているかのように見せてくれた。
すごい腕力だった、
俺は左足はほぼついてない状態で、右足の跳躍だけで踊ってた。


これだけの観衆のなか、
「うっかり足を滑らせました。だから、怪我をしました」
だなんて。
恥以外のなにものでもない。
そして、俺の恥は、イコール父上の恥でもある。

俺は微笑みすらうかべて、ジュン王子の腕に必死でしがみついていた。


「……部屋をでますよ」


ジュン王子は、不自然じゃない程度にスピードをゆるめながら、広間の出口にむかってゆく。


冷や汗がでてきた。


ジュン王子は小さくまた、「もうすぐです。頑張って」と言った。

踊っているほかの人間にまぎれて、壁際、壁際に近づいて行くと、そのうちのひとつの扉が小さく開いた。

そこに立ってるのはマサキ王子。

そして彼が肩を抱いてるのは。


………ミヤ…


ミヤは、小柄な体をさらに小さくさせるように、身をちぢこませながら、広間を覗いてる。
本来、侍女や世話人たちは、ここには入れないから、なのたろうけど。

だけど。

なんだって、そいつに肩抱かれてんだよっ!


自分の状況を棚にあげて、カッとした。


そうしてるうちに、マサキ王子と目があったらしいジュン王子は、「ナイス……」と呟き、少し力をこめ、躍りながらそちらの扉に近づいていった。

ミヤが俺に気がつき、顔を硬くした。


ジュン王子は自分のマントを翻し、一瞬目隠しのようにして、俺の体をミヤに向かって押し出した。
ミヤに抱き止められる俺。
衝撃は、ミヤの肩にまわされたマサキ王子が吸収してくれて。

「姫。お大事に」

「…じゃあ、あとはよろしくね。俺も戻ります」


早口でジュン王子とマサキ王子がいいおいて静かに、でも素早く扉がしまり。

静かな廊下には、険しい顔のミヤと、不機嫌な顔でミヤに抱きつく俺が残った。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ