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キラキラ

第20章 🌟🌟

「……」


「……」


抱きついたままの姿勢でなにも言わない俺に、ミヤが、ぽつりと言った。


「足は痛みますか」


「……」


痛いよ、すごく。
もう感覚ねーよ。


心で返事した。


「……ひとまず部屋にもどりましょう」


「……」



おい。なんか俺にいうことねーのかよ。


また心で返事した。



「サトコさま?」


「……なに、あれ」


思ったより冷たい声がでた。
体を離し、ミヤをみつめる。
ミヤも、黙ってじっと見つめ返してくる。
その茶色い瞳があまりにも綺麗で、つい苛立ちをぶつけてしまう。


「肩なんか触らすなよ」


マサキ王子に肩を抱かれたミヤの姿が脳裏によみがえり、胸がざらつく。


背の高いマサキ王子の腕のなかにすっぽり入っていたミヤ。


……カッとした。


足が痛くて、ジュン王子にしがみついてる自分が情けなかった。
二人セットで立ってる姿に、俺のものに触るな!と、思わず叫びたかった。


自分がこんなに嫉妬深いなんて……。
戸惑いながらも、揺れる感情が押さえきれない。


ミヤは硬かった顔をくずし、ちょっと困ったように笑った。
そうして俺を抱き寄せ、ポンポンと背中をあやすようにし、


「……サトコさま。ひとまずお部屋に」


と、囁いた。


分かってる。
こんなとこで、姫が世話人と抱き合ってるなんて噂になったら、いろいろ面倒だ。
早いところ、移動しなきゃいけないよな。


「………ばかやろー…」


俺は小さく訴えて、ぎゅうっとミヤの首に抱きついた。
いい匂いがした。
安心するミヤの匂い。


ミヤ……ミヤ。


泣きそうな顔をみられたくなくて、俺はミヤの肩にそのまま顔をのせた。
見かけによらず力のあるミヤは、俺の膝裏に腕をかけ、俺を両手で抱き上げた。


「……今夜、部屋にいきます」


耳打ちするミヤに、こっくり頷いて、またぎゅうっと彼の首にしがみついた。


ミヤは、俺を抱き上げたまま、足早に広間前から、俺たちの部屋がある別棟に移動した。

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