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キラキラ

第20章 🌟🌟

*****


「ミヤ!!」


自分の部屋に入るなり、苛立ちをかくせない声で、その人の名を呼んだ。

中にいたミヤが怪訝な顔で、

「はい」

といって、歩いてきた。

優雅な足取り。
隙のない動き。

姿を確認するだけで落ち着く。
まるで精神安定剤のような存在の彼に、俺は、我慢してたものを吐き出すように、訴えた。


「あいつ、やっぱりヤバイ!もう会わない!!」

「…サトコさま。言い方」

「だって……!」

言いながら、ペタペタ歩きながら、ヒールを脱ぎ捨て、裸足でソファに飛び乗るように座った。

濃紺のドレスが、ふわりと舞い、裾に飾られた宝石がシャラっと鳴る。

ぷすっとした顔で、ミヤをねめつけると、ミヤはやれやれという顔になった。

「ジュン王子ですか。今度はどうされましたか?」

「……キスされた」

「………どこに」

「手」

ん、と左手を差し出してみせたら、ミヤが苦笑いして、肩をすくめた。
それくらい…って顔してる。

なんだよ!
全然それくらいじゃねーだろ!


「そんなの。挨拶でしょう?」

「すっげ、エロいキスだぞ。ブチューって」

「……」

ミヤが嫌な顔をした。

ほらな。
おまえも嫌だろ?

「…今回はこの前の御礼をしなきゃいけなかったから、会ってやったけど。次はないかんね!」


ピシャリと言い切ったら、ミヤは小さく

「……わかりました」

と言った。

だけど、この頃の松の国のアプローチは、実はすごい……らしい。
ついでにいえば、相の国も、今まで以上に頻繁にコンタクトをとってこようとしている……らしい。
母上からさっき聞いた話だ。


だとすれば、相の国から、ミヤのことも守らないといけないし、俺、結構大変かもな。

俺は、ミヤをじっとみつめた。

「ねえ、ミヤ」

「はい」

「俺のこと好きだよね」

「……」

ミヤが咎めるような目で俺を見た。

俺は周りをみて、もう一度言った。

「誰もいないよ。ねえ」

ミヤは、自分も素早く周りをみて、口をへの字にしながら、小さくうなずいた。


「じゃあ、マサキ王子に言い寄られても、好きな人がいるって、ちゃんと言うんだよ」

ミヤにもちゃんと自己防衛してもらわないと。

自分が魅力的な男だと、自覚してもらわないと困るよ。
そのへんこいつは、とんと無自覚だから。

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