キラキラ
第21章 ひぐらし ~バースト4~
「ね。相葉くん。急がないと」
甘えるような声音と上目づかい。
その子は、自分に興味を持たせたくて、精一杯可愛らしくしてるように見えた。
けなげというか。
なんというか。
分かりやすすぎて、吹き出しそうになる。
……相葉くん狙いなんだね、あんた。
男子の揃いのジャージと同じものを着てるところをみると、マネージャーってとこだろう。
短い髪の毛が、活発そうな印象で、黙って立ってりゃ可愛い部類には入りそうだ。
俺の好みではないけど。
相葉くんは、「ん?ああ……」と、曖昧な返事をした。
……相葉くんの好みはどうなんだろう。
「いつもの席、なくなっちゃうよ」
その子は、もう一度急かすようにして、チラリとこちらに視線をよこした。
その大きな瞳の中から、俺に向けられる負の感情を感じる。
ああ、そうか。
突然現れた俺が、相葉くんの興味をさらっていってるからおもしろくないんだ。
もしかしたらこれからの予定まで覆るかもしれないって、恐れてるわけだ。
二人で、もしくはみんなで、どこかに行く予定でもしてたのだろう。
……さて。どうしたものか。
俺だって、相葉くんつかまえるためにずーっと待ってたんだけどなあ。
黙って、俺がスマホをポケットにしまうのを見て、相葉くんが、いいこと思い付いた!とでもいうように満面の笑みになった。
「今から、みんなで駅前のマクドで、飯食いながら夏休みの宿題するんだ。かずもおいでよ!」
……なるほどね。
だけど、俺は正直すっかり気持ちは萎えてしまっていたから。
「……いや、いいよ」
今日はやめとこう、と決めた。
せっかく待ってたけど、このアウェーな感じは、今の俺にはちょっときつい。
次はあらかじめ相葉くんの予定をおさえてから動いた方がよさそうだった。
ちょっと失敗だな。
「ええっ!!なんで?!俺を待っててくれたんでしょ?!」
相葉くんが、大騒ぎしてる。
…………(笑)
苦笑いだ。
少しは空気よめよな。
今、俺とこの場を去ることは、得策じゃないよ。
明日からも部活あるんだろ。
「違うよ」
「嘘だ」
「嘘じゃないって。……じゃあ、またね」
さっさと去るべく、立ち上がったとたん、サーっと血が一気に下がった感覚。
やばっ……立ち眩みっ……
足に力が入らず、その場に崩れ落ちた。