キラキラ
第21章 ひぐらし ~バースト4~
「熱中症を、甘くみちゃダメだよ。ひどくなったら大変なんだから」
言いながら、相葉くんは、次々出してくれる保冷剤でいろんなところを冷やしてくれた。
……なんだか、俺は熱中症ってことになってる。
でも、相葉くんがいうなら、それでもいっか、と思った。
少しずつ水分をとりながら、相葉くんの手に頭を委ねてると、頭痛も、グルグルもだんだん落ち着いてきた。
うつむいてた頭を、そっと持ち上げたら、こちらを心配そうにみながら、大丈夫?と、問う相葉くんと目があった。
いつも、甘えるようにじゃれついてきてる相葉くんの表情とは全然違って。
頼もしさすら感じられる、その手つきや口調には、温かさがある。
どちらが年上?って感じだ。
相葉くんは、優しく言った。
「一人で帰すの心配だし、送っていってあげるよ。………とりあえず、あいつら待たせてるし、やっぱり一緒にマクド行こうよ。涼しいとこで休憩した方がいいよ」
「……」
……気が進まない。
でも、よく考えたら、俺はまだ大野家に帰れないんだった。
翔さんと潤くん。あの二人が、もしもいい雰囲気になってたら、……邪魔したくないもの。
「……うん。じゃあそうする」
渋々うなずいたら、相葉くんは、嬉しそうに笑んだ。
「大体さ、かず、もともと俺の勉強見てくれるつもりだったんでしょ?」
「いや……」
「嘘。リュックの中、一年の数学と化学のテキストが入ってたもん」
見たもん、と相葉くんがくふふっと笑った。
「ありがとうね。かず。やっぱり俺を待っててくれたんだね」
「………たまたまだよ」
口を尖らしていう俺を見て、相葉くんがぎゅっと肩を抱いてきた。
自分より大きな手。広い肩。
すっぽりと包まれる。
相葉くんからは、制汗剤らしき爽やかな香りがした。
ふふって嬉しそうにしてる相葉くんに、やっぱり来てよかったな、と思った。
暑苦しいはずの気温なのに、ちっとも嫌じゃない相葉くんのスキンシップに、我ながら戸惑いながら、顔を向けて、笑った。