キラキラ
第21章 ひぐらし ~バースト4~
ところが。
そんな俺の意気込みは、あっさりと空を切った。
玄関先で、応対にでてくれた翔さんが告げた言葉に、唖然とする。
「え………かず…熱があるんですか?」
「うん」
翔さんが困ったように笑った。
「………ちょっと高いから、しんどいのか、朝からずっと寝てるんだ。だから、勉強は……今日は、みてやれないかも」
「そう……ですか」
熱……?
頭が真っ白になった。
でも、ちょっと考えたら分かるじゃないか。
かずは、体があまり丈夫じゃないんだよ。
倒れた時点で帰らせたら良かった。
送ってあげたら良かった。
マクドで、冷えちゃったのかな。
それとも、俺を待ちすぎて、疲れちゃったのかな。
……なんで、もっと気遣ってあげられなかったんだろう?
……なんで。なんで。
後悔ばかりだ。
俺は、ぎゅっと拳を握りしめて、翔さんを、見上げた。
これだけは伝えなくちゃ。
「あの……翔さん。かずが起きたら、……俺がごめんって謝ってたって…伝えて下さい」
「……うん。いいけど。なんで?」
不思議そうに首をかしげる翔さん。
でも、詳しくはいえない。カッコ悪くて。
「いろいろあって……」
しょんぼりしてる俺に、翔さんが気遣うようにポンポンと肩を叩いてくれた。
「分かったよ。……必ず伝える」
「お願いします」
ぺこりと頭を下げて、大野家をあとにした。
翔さんからは、俺でよけりゃ勉強みてやるけど?と申し出てもらったけど、そんなん受験生に頼めないよ。
だいたい、かずに会う、という下心ありきで、おしかけてるから、勉強は二の次だもの。
小石をけりながら、帰路についた。
なんで、俺は、こんなに不器用なのかな。
ひとつため息をつく。
かずたちとの出会いのきっかけのときもそうだった。
どうでもいい因縁つけられて、3年に追いかけ回されたし。
普通にしてるつもりなのに、歯車がかみあわない。
後悔するような生き方はしたくないんだけどな……。
ふと、コンビニが目に入った。
学生らしき男の子たちが、ワイワイいいながら店の前でアイスを食べてる。
……かず、アイス食べるかな。
体調くずしたら、母さんが、よくアイスやらゼリーやら買ってきて食べさせてくれたのを思い出す。
俺は、通りすぎかけた足をとめ、コンビニに引き返した。