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キラキラ

第21章 ひぐらし ~バースト4~

 
実は、かずの部屋に入るのは初めてだったりする。
これまで、大野家には何回か訪れたけど、全部潤と一緒だったし、リビングでみんなでワイワイというパターンばかりだったから。

……ちょっとワクワク。

翔さんの後を追い、リビングとは逆のかずたちの自室がある廊下の方へ、足を踏み入れた。

「かず。相葉くん来たよ」

軽くノックして翔さんが声をかけながら、扉を開いてくれた。

目配せしてくれる翔さんに、ぺこりと頭を下げて、俺は、かずの部屋に入った。

強い日差しを遮るためか、ブラインドを下げた部屋は少し薄暗い。
空調がきいてるかずの部屋は、部屋の隅っこにある空気清浄機のせいもあってか、なんとなく空気が澄んでいる気がした。

窓際に机。
ブックエンドで綺麗に並べられた参考書などに、かずのきっちりした性格がうかがえる。

壁際におかれたベッドの中のちいさな山が、もそもそうごいた。

「…かず」

そっと呼び掛けたら、その山が起き上がりそうだったから、慌ててとめた。

「いーよ。起きないで」

「………あいばくん」

微かな声。

昨日の張りのある声に比べると、ちょっぴりか細くて。

静かに歩み寄り、顔をのぞきこむと、布団から目だけだして、こっちを見てる。
小動物のようなそのしぐさ。
そして、庇護欲をかきたてられそうな、その見上げてくる視線に、俺は、なんだかきゅんとした。


「……大丈夫?しんどい?」

「ううん…もう大分いいよ」

ベッドサイドにしゃがむと、俺の顔をみて、かずがクスクス笑った。

「……滝みたい。汗」

「…へへ。これ買ってきた」

カサリと、音をさせてビニールからバニラアイスを見せてやる。


「お見舞いだよ」

カチカチだった手触りが、少し柔らかくなってる。

「食べる?無理だったら、翔さんに預けてくるよ」

「……食べる」

ちょっと考えて、かずはごそごそ起き上がった。

うおっ……かず……可愛い!

くちゃくちゃの髪の毛が、アッチコチはねてて子供っぽい反面、大きめのTシャツからみえる首もとやら鎖骨が、やたらに色っぽくて、そのアンバランスにドキリとする。

そんな邪な感情を読まれまい、と焦りながら、アイスの蓋をあけた。
そうして、小さなスプーンとともに、かずに、

「はい」

と、手渡そうとして、俺は、ふといいことを思いついた。

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