キラキラ
第21章 ひぐらし ~バースト4~
「……ねえ、かず?」
アイスを受け取ろうと手を伸ばしかけたかずが、突然動きをとめた俺を、不思議そうな顔で見上げてきた。
「相葉くん?」
俺は、にっこり笑って、かずの茶色い瞳を見つめた。
「……ひとついい?」
「……いやだ」
「まだなにも言ってないじゃん!俺の心読んだの?!」
「……読んでないけど、顔がなんかデレデレしてるから、変な予感がする」
バッサリ切って捨てたかずに、へんなことじゃないもん、と苦笑して、俺は、スプーンでアイスをすくって、かずの口元にもっていった。
「はい。あーん」
「……」
かずが、文字通り固まった。
ピシッと音が聞こえた気がするくらいフリーズしてる。
……もう。可愛いなあ。
俺は、くふっと笑った。
「ね。昨日せっかく来てくれたのに、家庭教師みたいなことさせちゃって、つまんなかったでしょう? それに、もっと早く送っていってあげたら良かった。熱だしたのもそのせいじゃないの?」
「……そんなこと……」
かずが、戸惑うように首を振り否定してる。
「だからおわび。はい、口開けて」
「……これ、おわびなの?」
小さく呟いて、俺を上目づかいに見上げてくる顔は、ほんのり赤い。
「そうだよ。はい」
「いーよ…自分でたべる」
「一回だけ!ね?俺、やってみたかったんだ」
「は?」
「ドラマとかであるじゃん。お見舞いにきた恋人が、食べさせてあげる、みたいな」
「俺ら恋人じゃないだろ」
わ。
きっつ…
恋人って。勢いで言ったワードだけど、そんな否定しなくたっていいのにな。
軽くジャブをうったら、思いっきりカウンターパンチくらった気分。
「うん、そうだけど」
だけど、そんなんでめげないよ、俺。
「ほら、溶けちゃう。ほら」
最初っから険しい恋だってわかってるもん。
成就するとは思ってない。
性別からして、間違いだろ?
同性はありえねーもん。
「かず」
負けない。
「………」
じっと黙っていたかずが、……ちょっと口をあけた。
恥ずかしそうな顔で、小さな赤い唇がひらく。
俺は、スプーンをそっと押し込んだ。
パクリとくわえたのを確認して、静かにスプーンをひく。
赤い唇に、バニラの白い液体がにじみ。
……エロい。
興奮して心臓がうるさく鳴り出した俺。
かずは、むにっと唇を動かした。