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キラキラ

第21章 ひぐらし ~バースト4~

智さんは、静かに「そうか……」と言った。

そして、ぐすぐすと鼻をすする俺の頭をゆっくりゆっくり撫でてくれた。
その手のひらはとても優しくて、あったかくて。

どうしようもなく暗く固まってた心が、じわじわとほぐされていく。

なぜだか冷たかった指先も温かくなってきた。

ずずっと鼻をすすりあげ、目をこすって智さんを見上げると、智さんは、柔らかく笑んで頷いた。

「かずは、ありのままのかずでいればいいんだよ。……だって、知ったものは、もうしょうがないだろう?」


そうだけど……。


でも、智さんの言葉は、いつでも魔法の言葉のように染み渡る。
無理だ、できないと思ってても、そうかな?それでいいかな?と思わせてくれるのだ。


「……できるかな…」 

普通に。
意識しないで普通に。

「できるよ」

智さんは、クスクス笑った。

「知ってることを、知らないと嘘をつく必要はない。まして、俺、実は知ってるんだ、とひけらかす必要もない。……かずは、かわらずにそのままでいるんだ」

参考までに聞くけど、誰の心を読んだの?と問われたから、素直に、

「……相葉くん」

と、答えたら、智さんは、肩をすくめてみせた。

「じゃ、なおさらだ。かずが知ったことが何なのかは知らないけど、あの子ほど裏表のない子はいないよ。仮にかずが、心を読んだことを伝えても……あの子なら大丈夫と、俺は、思う」

……そうかな。

じっと黙って智さんを見上げると、智さんは、優しく微笑んだ。

「……だから、もう泣くな」

「……うん」


頷いて布団を引き上げた。

智さんは、俺の髪を撫でる手を、そっと額にすべらせ苦笑する。

「ちゃんと寝ないと。……熱が下がってないぞ」

「智さん」

「ん?」

「……キスして」

「……いいよ」

智さんは、ふわりと笑って、ゆっくり顔を近づけ俺の唇を塞いだ。

しっとりと感じる甘くて柔らかい智さんの温もり。

……この温もりに何度助けられてきただろう。

時に体を重ね、繋げ、智さんを感じて、俺は、自分を立て直してきた。

恋人がいる智さんに、無理を言って、温もりをわけてもらい甘えてきた。



……智さんが、ゆっくり唇を離し、にこりと笑う。

「おやすみ、かず」



相葉くんに、どう向き合うか。どうしたいのか。

そろそろ自分の足で立たなくちゃ。

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