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キラキラ

第21章 ひぐらし ~バースト4~


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夏休みも終盤にさしかかった。

相葉くんは、相変わらず部活に忙しいらしくて、たまにラインがくるけれど、普通にやりとりしている。
そう。普通に……できてるつもりだ。


『かず 元気にしてる?』 
『元気だよ。宿題は終わった?』
『まだだよ かず助けてー!』
『ふふ。頑張って』

このくらいのこと。

なのに、なんだか、いままでより緊張してる自分がいる。
意識しすぎなんだろうな、と我ながら思う。


俺が、スマホの画面を眺めながらぼんやりしていると、傍らの潤くんが、怪訝な顔で見つめてきた。

「……どうしたの」

「ん?……いや、なんでも」

曖昧に笑って、スマホの画面を閉じた。
そして、できた?と、潤くんのノートをのぞきこんだ。

今日は潤くんが我が家に泊まる日。
同時に、俺が彼の宿題を監督する日でもあった。

翔さんは、自分の勉強に専念してもらってる。
時々、寂しくなるのか、自室からでてきて俺らにちょっかいかけてくるけど。

「お。あってんじゃん」

ノートに書き連ねてる数式に目を走らせ、手にある赤ボールペンで大きなマルをしてやったら、潤くんは嬉しそうにガッツポーズをした。

思わず笑って褒めてやる。

「やるね」

「ふふ……実力はこんなもんだよ」

「バッカ。先生がいいんだよ」

軽口をたたく潤くんは、俺の切り返しにふわりと微笑んだ。


……なんだろうな。

嬉しそうに、テキストをとじる潤くんを見て、俺は、ちょっとだけ胸がくすぐられる。

潤くんは、翔さんとつきあい始めて、すごく艶っぽくなった。
ちょっとした目線や仕草に、関係ない俺までドキリとしてしまうのだ。

翔さん……これ、虫がつかないようにするの大変だよ、きっと。

潤くんは、ガードが固くてケンカも強そうにみえるけど、そういう方面は天然ぽいから。

触られる前に逃げるんじゃなくて、触られてから相手をシメルんだろうな。

キョトンと俺を見つめる潤くんの大きな瞳を見返して、俺は、クスクス笑った。

「なに?」

「なんでもない」

「……ふーん……あ、そうだ。かず明日応援行く?」

「……?何?」

「何って。練習試合。相葉くんの」

「……え」

相葉くんの?








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