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キラキラ

第21章 ひぐらし ~バースト4~

体育館らしき建物の近くまでくると、ダンダンとボールが床を打つ音や、バッシュのキュッキュッと、いう音が鮮明に聞こえてきた。

かけ声や、指示する声。
いろんな声も聞こえてくる。

「いるかなー…雅紀」

潤くんが体育館の扉から中をのぞいてるけど、俺は、バカみたいにドキドキしてて、とてもじゃないけど一緒に中をのぞけなかったから、潤くんの広い背中の陰に隠れてた。

だって……。

今さらだけどさ。
俺に試合があることを黙ってた、ってことは、俺に来てほしくなかったってことだよね。

それは何故なんだろ……と、さっきからずっと考えてるけど、分からないのだ。

「……いねーな。準備でもしてるのかな」

ひとりごちながら、潤くんは、「二階にあがってようか」と、さっさと扉の前を通り抜け、廊下に踏み込んだ。

「二階席にあがれる階段が、奥にあるんだ」

潤くんの案内に従い、薄暗い体育倉庫の横を抜けて、細い階段をあがってゆく。
急な階段に、ゼイゼイ言いながらあがりきると、
意外とひろい観客席が、目前に広がった。

フロアが一望できる特等席のベンチに座り、見渡せば、既に相手校は到着してて、アップをしているようだった。

緑色のユニホームが相葉くんたちの学校だと、潤くんが教えてくれる。 

「お。雅紀来た」

え……

ドキリとして、潤くんが見てる方につられて目をむけると、チームメイトと笑いながら体育館に入ってくる相葉くんがみえた。

眩しいくらいの満面の笑み。

その顔が、ふとこっちを見上げた。
潤くんが、「おーい」と手を振った。
相葉くんの顔が一瞬強ばって、それから取り繕うような笑顔になったのを、……俺は見逃さなかった。

相葉くんが小走りにこちらにきて、真下から俺らを見上げる。

「来てくれたんだ。潤。……かずも。ありがとう」

「おまえ、つまんねー試合したら、途中で帰るからな」

「しねーよ!」

はははっと笑いあう二人。

俺は、その横で必死で作り笑いを浮かべるしかなかった。
相葉くんの顔には、「なんで来たの?」って書いてあった。
心なんか読まなくたって、分かった。

そんっなに、俺が来たらメーワクだった??

このネタで相葉くんを苛めてやろうと思ってたのに、なんだか萎える。

……俺、想像以上にショックをうけてる。





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