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キラキラ

第21章 ひぐらし ~バースト4~

……なんて。

そんな予想は見事に外れた。
格下の相手だったことを差し引いても、終わってみれば、スタメンチームは文句なしの快勝。

相葉くんたち、一年生チームにいたっては、完全にワンサイドなゲームで圧勝だった。

「……潤くんたちの学校って強いんだね」

「んー。まあ、一応スポーツに力をいれてる学校だかんな」

手すりにつかまって、フロアの中でハイタッチをかわしてる相葉くんたちを見つめる。

例の勉強が苦手なマクド軍団は、ボールをもたせたら、顔つきががらりとかわり、信じられない動きをみせた。

公式を覚えられない、と、泣き言を言ってたやつは、すごいスピードのパス回しをしながら得点をかせぎ。

英語で四苦八苦してたやつは、体を使い相手のミスを誘っては、ボールを奪ってチャンスを作り続けた。

化学真っ白の茶髪くんは、体の一部のようにボールを操り、真っ先に切り込んでいってたし。

相葉くんは、ガンガンシュートを決めるポイントゲッターだった。
相手のディフェンスをかわしては、どんな場所からも、気持ちいいくらいに確実にシュートを決めて。

正直、むちゃくちゃかっこよかった。


相葉くんたちが、こっちに向かって手を振るから、思わず落ち込んでいたことも忘れて、笑顔で振り返す。


「お、笑った」

隣の潤くんが嬉しそうに俺を見た。
俺は、はっとして再び真顔にもどる。

「……なんだよ」

「機嫌……なおった?」

「なおるも、なにも。別に悪くないし」

「そうか」

なおも強がる俺に、潤くんが、あーあ……わっかんねーな、と笑って手すりによりかかって呟いた。

「雅紀さあ……試合を、かずに教えなかった理由が、絶対あるんだ。だって、あいつはかずのこと……」


「……え?」


「……ごめん。今のなし」


いや、知ってるし。

俺を好きなんでしょ。

分かってる。言わないけどね。

……つか、なんで、潤くんがそんなこと知ってんの?

慌てて口をつぐんだ潤くんを、じいっと見つめる。
潤くんは、あーとか、うーとか言ってる。
まずいことを口走ったと言わんばかりだ。


「……」


ふふ、と笑って立ち上がった。

試合も観たし、相葉くんも観た。
もうこの場所に用事はない。


「喉乾いた。この学校自販機どこ?」


潤くんと、ジュース飲んで帰ろう。

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