キラキラ
第21章 ひぐらし ~バースト4~
面白おかしく騒ぎ立てる男子たち。
相葉くんは、薄く笑い、困ったような複雑な顔をして輪の中心に立ってる。
……まあ、複雑な顔というのは、俺の見立てだけど。
俺は、たまたま階段に座って、いつもより目の位置が高いから、よく見える。
見えてしまう。
騒ぎ立ててるその面子は、さっきの試合のマクド軍団。
あと、別の部のやつらなのか、この日にこの場にいる同級生が、とにかく集まってる感じだ。
……あ、どーしよ。
めっちゃくちゃ、イライラしてきた。
「……なに?」
通話を終えた潤くんが戻ってきて、硬い表情をした俺の視線の先を確認して、眉をひそめた。
「……あれ、雅紀じゃん」
「帰ろ。潤くん」
「……え……でも」
「関係ないもん、俺ら」
ピシャリと遮り、俺は人だかりに背を向けた。
潤くんが、後ろを気にしながら、俺の後を追いかけてくる。
なに、ヘラヘラしてんだ、相葉くん。
バカじゃねーの。
傍らのゴミ箱に、空のペットボトルを放り投げ、早足で歩いた。
どうしてこんなにイライラしてるのか、自分でも戸惑っていた。
……俺のことを好きだって言ったじゃん。
………いや、言ってないか。
…………俺が勝手に、読んだだけだった。
唇をかんで、ポーカーフェイスにつとめながら、前を真っ直ぐに見つめて歩いた。
……ほら。だから人の心なんて読むもんじゃないんだ。
心なんてすぐ、変わるんだから。
翻弄されることなんか、分かりきってたじゃん。
だいたい相葉くんモテるんだから。
何も、俺みたいな男を好きになることないよね。
お得意の後ろ向きな感情に支配されはじめた自覚がある。
後ろで、ワッと歓声があがった。
キャーと言う声にまじり、おめでとうって大声も聞こえた。
……おめでとう、かよ。
そーかよ。
潤くんが黙って、俺に歩調をあわせて歩いてくれる。
おかしいな。
相葉くんが誰とつきあおうが、俺には関係ないはずなのに。
…………心なんか読むんじゃなかった。
「潤くん」
「…………ん?」
「まだ帰らないで」
大野家からそのまま自分の家に帰る予定だった潤くん。
「……帰らないよ」
「良かった」
今、一人になりたくなかった。