キラキラ
第21章 ひぐらし ~バースト4~
「チューハイなかったっけ?」
一通り肉を焼き終わった頃、智兄が、席をたって、冷蔵庫をのぞきに行った。
俺は、玉ねぎを焼きながら、「一番上の段!」と、声を張り上げる。
ビール二缶だしてたはずなのに。
やっぱり焼肉だと、酒もおいしくて、すすむんだな。
「ペース早いじゃん」
ふふっと声をかけて智兄を振りかえる。
「もう、ぬるいもん。キンキンに冷えたのが飲みたくて」
「贅沢」
「焼き肉だから許して」
チューハイのプルをあけながら、笑った智兄がこちらに目を向けた。
……と。
その優しい目が、驚きに見開いたのと、「えっ……」と、戸惑う声が向かいの席に座ってる潤からあがったのが、同時だった。
「……え?」
智兄の視線の先を見れば。
「……んふふ……」
かずが、潤の肩にコテンと頭を預け、よりかかるようにくっついて、にっこり微笑んでいた。
「え……かず?」
潤が慌てるように、皿を机において、かずを支える。
かずの手にはお茶の入ったグラス。
そのグラスに再び口をつけかけたのを……見た。
「翔!取り上げろ!ありゃ、俺の酒だ!」
智兄が怒鳴って、俺は、反射的に手首をひねり、かずのグラスを宙に飛ばした。
勢いで中身が少しこぼれたのが、真下にいた潤の腕にかかる。
「……ビール…?」
その匂いをかいで、潤は顔をしかめた。
その間もかずは、にこにこ笑って
「じゅーんくーん」
と、くっついて、肩にぐりぐりと頭をこすりつけてる。
潤は、戸惑いながら、そんなかずを受け止めて、どうしたらいいか分からない顔を、俺に向けた。
……お茶と間違えてビール飲んだってか?
ありえねー…。
俺は、グラスをシンクに飛ばし、タオルを持って潤に歩み寄った。
「ごめん、濡れたな」
「いーよ。それより…」
「ああ。かずは、こっち」
智兄が傍らから腕を伸ばし、ふにゃふにゃになって潤に寄りかかってるかずを、引きおこした。
かずは、へらっと笑って、智兄の首にその細い腕を巻きつけた。
「…さとしさぁん………」
ゆるゆるした舌ったらずな口調で、智兄の名前を呼ぶかずは、……なんだか妖しくて。
「はいはい。酔っぱらいになるには、まだ三年早いぞ」
たしなめながら、かずを抱き上げようとした智兄にかずが唇をつきだした。
「ちゅー……」