キラキラ
第21章 ひぐらし ~バースト4~
持ってたコーヒーのマグカップを、はい、と手渡して、俺は、潤から聞いたもうひとつの事実を、智兄に伝えた。
「……でもね、相葉くんはかずが好きなんだよ。ひとめぼれだって」
「…なんでそんなことわかるの」
ありがと、とマグを受け取り、智兄がコーヒーを一口すすった。
「って、潤に言ってたらしいよ」
「じゃあ……話がちがうじゃねえかよ」
「そーなんだよね……」
ボソボソと喋ってる俺らなんか、どこ吹く風といった様子で、かずは楽しそうに鼻歌を歌っている。
智兄は、難しい顔をして黙りこんだ。
コトリと静かにマグを傍らのテーブルに置き、かずの頬にそっと手をすべらす。
「なあ……かず?」
優しい声音で、智兄がたずねる。
「んー?」
かずは、いまだふわふわした顔で、ぼんやりと智兄を見上げた。
「かずは……相葉くんが好き?」
………おお。智兄、いきなり核心つくんだ!
俺は、驚きながらも、かずの反応をみようと、ちょっと体をのばした。
すると、かずは、え?という表情をしたあと、みるみる泣きそうな顔になった。
「……すきだよ……でも、あいばくん、かのじょつくっちゃったもん」
ペラペラと自分の心を喋るかずに、思わず智兄と顔をみあわせた。
好きなんだ?!
そこまで言って、かずは、その潤んだ瞳からポロポロ涙をこぼした。
「……ばかぁ…」
「……ごめん。思い出させたな」
智兄が、またやさしくかずの髪を撫でた。
かずは、ぐすぐす鼻をならしながら、丸い手で
何度も自分の目をこすった。
「……おれをすきだって……おもってたのにぃ……」
え?!
再び智兄と目をあわせた。
そして、智兄が、記憶をたぐるような遠い目をして……ああ、と呟いた。
「もしかしたら、あの日へこんでたのは、このことだったのかもしれないな……」
「あの日?」
「ああ。相葉くんの心をうっかり読んじゃったけど、それは自分が知ったらいけないことだったって。泣いてた」
真面目なヤツらしい。
俺は、うん、と頷いた。
「かずなら……そう言いそうだな」