キラキラ
第21章 ひぐらし ~バースト4~
かずは、きっと、相葉くんの心に触れてしまったことで、自分でも分からなかった思いに、気づいてしまったに違いない。
そして、今日の出来事だ。
……だからか。
傷ついた顔をしていたというかず。
これだけ、荒れるかず。
理由にやっと合点がいく。
……相葉くんを好きだから、だ。
だけど、同じように自分を好きだと思ってくれてた相葉くんに恋人ができたかも、だなんて。
両思いだと信じてただけに、これはきついよな。
別に相葉くんから、直接好きだと言われたわけじゃないのだから、彼を責めることもできやしない。
本来 相葉くんが恋人をつくろうが、自由のはずなのだ。
「……寝た」
涙のあとを残しながら、かずが意識を手放してる。
智兄が優しく髪を撫で続けてる。
いつのまにかシャワーからでて、俺らのやりとりを見守ってた潤が、思いつめた顔で呟いた。
「俺が雅紀に直接聞いてみるよ」
「喧嘩とかはやめろよ?」
「……わかってる」
「かずが、相葉くんを好き、という部分はふせてな」
智兄が念をおすと、潤は、もちろん、と言った。
「回答いかんによってはシメる」
「……やめろ(笑)」
コーヒーいる?と、聞いてキッチンにむかう。
肩にかけたタオルで、濡れてる髪をかきあげながら、潤が、「アイスコーヒーがいいなあ」と言った。
潤のニコリとした笑顔に、きゅんとする。
「……待ってろ」
自然とこちらも笑顔になり、グラスを用意する。
人を好きになるって、不思議だ。
好きになろうと思って、なるもんじゃない。
いつのまにか……なんだよな。
そこには悪意や故意は存在しないはずなんだ。
カラカラとグラスに氷をいれる。
色んなことがあって、智兄に助けを求め続けていたかずには笑顔になってほしい、と、心底願う。
きっとそれは、智兄も同じだろう。
外野がとやかくいうことじゃないし、まして、お願いすることでもないけれど。
かずが触れた相葉くんの思いが、嘘ではないことを信じたい。
相葉くんが、恋人をつくったことが、何かの間違いであればいい。
自分が初めて好きになった存在が、自分を好きでいてくれてた奇跡。
この幸せを、かずにも知ってほしいんだ。
「はい」
と、グラスを渡す。
ありがとうと笑う潤が、とてつもなくいとおしかった。