テキストサイズ

キラキラ

第21章 ひぐらし ~バースト4~


昨日のような試合観戦といった特別理由がないので、私服のままでは学校に入りづらい。

少し迷って、駅で雅紀を待ち伏せすることにする。

一年生は、部活が始まる時間より30分くらい早く行って準備をしないといけないらしいから、そろそろあらわれるはず……。

改札に体をむけ、駅が吐き出す人混みを、じーっとみつめていると、ほどなくして、その中から一際スラリとした男があらわれた。

ジャージにTシャツ姿、大きな鞄を背負った雅紀が、少しうつむき加減に歩いてくる。

俺が、通せんぼをするように立ちはだかると、一瞬怪訝な表情で顔をあげ、俺だ、とわかった瞬間、パッと笑った。

「潤じゃん!おはよう、どした?補習?」


「……ちげーよ」


どいつもこいつも、俺が学校近くにあらわれると、補習っていうか?

ちょっと失礼じゃね?

若干、ムッとしながら、雅紀のおひさまみたいな笑顔を見つめた。


「ちょっと聞きたいことあんだけど」

「なに? あ!昨日の試合のこと?」

あれはねー、と、無邪気に試合内容を説明し始めようとするのを、慌てて遮った。

「……そうじゃない。お前さ……なんで、かずに試合のこと黙ってたんだよ?」

雅紀の顔が強ばった。

「別に……黙ってたわけじゃ……」

「あれは、黙ってたっていうんだよ。なんで? かずに見られて困ることでもあったのか?」

「……」

「俺が言ってやろうか?」

「……え?」

「彼女をつくるとこ見られたくなかったんだろう?」 

雅紀の顔が、はっきりと、なんで?!という顔になった。
予想通りの反応に、思わず、大きなため息をついてしまう。


「見てたんだよ、俺ら自販機いたから。公開告白……っての?」


雅紀は、明らかにあちゃー……という顔をして、頭を抱えその場に座り込んだ。

「それ……かずも見た?」

「見た」

「なんかいってた?」

「………………何も」

「そう……」

「つかさ。おまえ、かずを好きだったんじゃねーの?」

「好きだよ」

「今も?」

「うん。一番」

「じゃ、なんで……?!」

思わず責めるような口調になってしまうのと比例して、声のボリュームが大きくなり、はっとして、口をつぐんだ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ