キラキラ
第21章 ひぐらし ~バースト4~
高校生二人が、険しい顔をして言い合いをしてると、思われるのか、通りすぎる人たちの眼差しに、好奇の目が含まれ出したのに、気づく。
俺は、雅紀を促して歩き始めた。
「歩きながら聞く」
そういうと、雅紀は、ばつが悪そうな顔をして、ため息をついた。
二人でゆっくりと歩をすすめ、やがて商店街をぬけたところで、黙りこくってた雅紀がポツリと口を開いた。
「…一日だけ。ケイを彼女にしてほしいって言われたんだ」
「…ケイに?」
「うん。まあ、正確にはユーリ先輩に」
ユーリ先輩……2年のマネージャーか。
雅紀は常日頃から、俺に部活のいろいろな話をしてくるから、主要人物の名前と顔くらいは俺も把握している。
ユーリ先輩は、ケイと同様に男子バスケのマネージャーをつとめている、小柄で、笑顔が優しい可愛らしい人だ。
その人が、雅紀にケイを彼女にしてくれって頼んだって?
なんだそれ。
「んなもん断れよ」
「断ったよ。最初は」
だけど……と、雅紀は、続ける。
「ケイは……俺のこと中学から好きだったんだって。だから、俺に好きな人がいてもいいから、一日だけ夢を叶えてほしいって、……頼み込まれたんだ」
「………」
「言ったよ?好きな人がいるから無理って。でも、それでもいいからって。ケイ本人にも言われて」
………俺には分からん。
好きな人がいる人の彼女になってうれしいのか?
変な顔をしていたのだろう。
雅紀が、くすりと苦笑いした。
「わかんないだろ。俺にも理解できない。でも一日だけどうしてもって。そしたらキッパリあきらめるっていうから、のってやったんだ」
「……じゃあ、あんな風に告白しなくたっていいんじゃね?」
だって……あれだと事情を知らないやつらは、マジのカップルだと思うだろ。
この告白が一日限定って。
誰が思う?
下手すりゃ、雅紀は、一日で彼女を捨てる不実なやつっていうレッテル貼られるぞ?
俺が言いたいことが分かったらしい雅紀は、首をふった。
「別に、俺はその方が好都合。俺が好きなのは、かずだけだから。評判は悪い方が、この先女の子はよってこないでしょ」
だけど……
「あの現場を、かずに見られるのは想定外だったなあ……」
雅紀は、はああと、深いため息をついたけど。
ため息つきたいのはこっちだ。
このお人好しが!