キラキラ
第21章 ひぐらし ~バースト4~
頭痛がしそうな現実に、髪をかきあげて、気を落ち着けた。
うつむき加減に歩いてる雅紀の横顔をみる。
「……で? ケイの一日限定体験はすんだのかよ?」
「うん。昨日あのあと一緒に晩飯食って、カラオケ行って、送っておわり」
宣言通り、サバサバした別れだったよ、と雅紀は笑う。
部活には支障のないように、というのが条件だったのもあり、別れ際泣いて困った、ということもなかった、という。
だけど……。
中途半端に、一緒に過ごす幸せや、自分にだけ向けてくれる笑顔なんかを知ってしまうと、かえって失った時に辛くなりそうだけど、そうじゃないのかな、と、俺は少しだけケイが心配になった。
多分……俺は無理だから。
絶対叶わない恋でも、無理矢理終わらせたりしない。
きっと気がすむまで、ずっとずっと思い続けるだろう。
俺の場合、たまたま、翔への思いは受け止めてもらえたけど、それだって、動いたのは翔が先だっただけのこと。
ずっと……モヤモヤした気持ちをずっとずっと抱え続けていたかもしれないのだ。
自分のなかでの思いの昇華の仕方は人それぞれだっていうことは、分かってるけど。
ある意味、ケイは強いのかもしれない。
……女って、すげーな。
俺は、歩みをとめた。
そのまま進んでた雅紀が、不思議な顔でこちらを振り返った。
鼻筋の通った端正な顔立ち。
澄んだ瞳には、悪い色なんか少しもみえず。
天然な明るさと優しさをもつこの男は、かずに惚れてる男。
……そして、かずが惚れてる男。
ふふっと笑いがこぼれた。
良かったな、かず。
「俺、帰るわ」
「え、学校行くんじゃないの?」
「言ったろ。おまえに用事があっただけ」
「…そっか」
頷く雅紀の肩をバンと叩いて、俺は少しお節介をしてみた。
「……おまえさ。今日、部活終わったらかずに会ってきな」
「え?」
「試合を黙ってたこと、むくれてたぞ」
「え、やっぱり?!」
「……あと。おまえに彼女ができた、と思ってっから、そのへんの真実も説明してこい」
「げ。やっぱり……?」
「あたりまえだろーが」
実はお前ら両思いだなんて、言ってやんないけど。
……これくらいの助言なら許されるよな。