キラキラ
第21章 ひぐらし ~バースト4~
「…昨日見たよ。告白されてたじゃん」
よかったね、と言われて、胸がズキリと痛くなった。
かずは、淡々とした口調だ。
少し薄い笑みすら浮かべて。
嘘だろ?
たった今、おまえが俺に恋心を抱いてる気持ちを読んだとこだぞ?
「………え。本気で言ってる?」
そんなことないよね?
ところが、かずは、俺の問いに柔らかく頷いた。
「うん。あのマネージャーでしょ。可愛い子じゃん。お似合いお似合い」
かずは、手元に視線をおとし、タオルケットをいじりながら、呟くように言う。
お似合いだなんて、死んでも思ってない口調じゃん。
なんなら、可愛いという言葉も心がこもってないし。
「あのさ。知ってる?同じ言葉を重ねて言うのは、そう思ってない表れらしいよ」
「……」
そっとつっこむと、かずは口をつぐんだ。
ポーカーフェイスを装ってるけど、なんだか無理をしているような気がしてならない。
ごそこそ動かす足や、タオルケットをいじる手も落ち着きがない。
……自信。
持っていいかな俺。
「かず」
「……」
「かず、こっち向いて」
かずが、しぶしぶといったように目をあげた。
伝えなきゃいけないこと言わなくちゃ。
ちょっとずるい手段で知った真実に後押しされるカタチだけど。
知るもんか。
わざとじゃないもん。
俺はかずの瞳を真っ直ぐにみつめた。
所在なげに、ゆらゆらゆらめいてるかずの瞳は、少し潤んでるようにもみえる。
…だよね。
もし、俺を好き、と思ってくれてたならば。
昨日の俺の仕打ちは、意地悪でしかない。
ごめんね。
俺は、かずの丸くて小さな手に自分の手を重ねた。
「……なに」
ひっこめようとするかずの手を、ぎゅっとつかんだ。
かずが、俺を見上げる
「なに……?離してよ」
「……おれ、かずが好き」
「……」
「好きだよ」
「………いや、おかしいだろ…彼女は?」
「ごめん俺、口下手だから読んでくれる?俺の心」
「……いやだよ」
「お願い」
「読まない」
「お願い」
「いやだ」
「かず……!」
きゅうっと手を握り、かずをみつめた。
「俺が嘘をついてないって、証明できる方法でしょ。かずが人の心を読まない主義なの知ってるけど。俺がいいってんだから、いいんだよ」