キラキラ
第21章 ひぐらし ~バースト4~
かずが黙った。
不安そうな瞳で見上げてくるから、俺は、大きくうなずいてみせる。
いいよ。
読んでよ。
真実しかないよ。
かずへの気持ち。
伝われ、この思い。
重ねた手をもう一度ぎゅっとした。
「かず」
「……」
かずが、覚悟を決めたかのように、ふっと吐息をついた。
すると、かずの纏う空気が、少し変化した気がした。
同時に、ふわりと何かに包み込まれるような感覚に陥る。
それは、泣きたくなるほど優しい優しい何かで。
重なる手からも温もりがサラサラと伝わってきた。
まるで、かずに抱きしめられているようだった。
……俺は目の前のかずを、ひたすらにじっと見つめ続けた。
かずの焦点は微妙にあってなくて。
俺を飛び越えて遠くを見ているかのようだった。
やがて。
「……お人好し」
ぽつりとかずが呟いた。
かずの瞳に力が戻ってる。
俺は、つめてた息をそっと吐き出した。
「それ。潤にも言われた」
「部活は……大丈夫なの?」
「大丈夫。それが条件だったから」
かずが、きゅっと唇をかんでうつむいた。
「……」
「かず。……伝わった?」
「……うん」
そのままコクンと頷くかず。
重ねた手を一度離し、そっと、ぎゅっと繋いでみた。
かずは、抵抗もなくされるがまま。
繋がれた手を、じっと見てる。
頬がほんのり赤いのは気のせいだろうか。
「………答え。ほしいな」
「………」
静かに催促してみた。
ある意味出来レース的な告白だけど。
かずからきちんと返事をきかなきゃ、安心できない。
好きでも、嘘をつきかねないもんな、この人。
「……俺、かずを好きでいていい?」
「………うん」
蚊の鳴くような声。
「……かずは?」
「……」
「……俺のこと」
「……」
「ねえ」
「………言わなくちゃダメ?」
…もったいぶるなあ…。
俺は苦笑いだ。
「じゃあ……テレパスでもいいよ」
「………」
かずが、はずかしそうに微笑んだ。
…………スキ
頭に届いた言葉。
間違いないかずの言葉。
テレパシーで告白なんて、俺たちなんだかカッコいいね。
「……カッコよくないわ」
きゅっと握り返された手のうえに、俺はもうひとつの手を重ねた。