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キラキラ

第21章 ひぐらし ~バースト4~

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Satoshi


持ち帰っていた資料とにらめっこしていたら、小さくノックの音がした。
このノックの仕方は、かずだ。

ふっと時計をみると0時をまわったところ。

………眠れないのかな。


「……はい」


少しだけ声を張って返事をしてやると、そっと扉をあけたかずが、顔をのぞかせた。


「…智さん…ちょっといい?」

「……いいよ」


かずが、遠慮がちに部屋に入ってくる。
少しオドオドしてるところに笑みがこぼれる。
そーいや、俺の部屋に来るのは久しぶりかもな。

体を重ねる時は、かずがSOSを出した時だけで。

かずの悲痛なその叫びに気がついた俺が、かずの部屋に行く、ということが多かったから……。


「どうした?」


ん?と聞きながら、ベッドに座るように促すと、かずは、少し笑って、ちょんと座った。
俺は、持ってた資料を閉じ、かずと目が合うように、くるりと椅子をまわした。


「……うん、あのね。報告」


かずが幸せそうな顔で微笑んだ。

つられて、こっちも微笑んでしまう。


うん、うん。
相葉くんのことだよね?


ことの顛末は、翔から聞いていたけれど、こうして本人のいい表情をみると、本当に良かったな、と思うよ。

かずは、ちょっと恥ずかしいのか、うつむきがちになった。


「……相葉くんがね、俺を好きって」

「うん」  

「……で、……俺も…………だから、……両思いになれた」 

「……良かったじゃん」

優しく言ってやると、かずは顔をそっとあげた。


「やっと……智さんと翔さん以外に、俺を見てくれる人ができた」

「……うん」

「だから……今までありがとう」

「……いいや」


俺に抱かれることをやめるって、報告に来たんだ、と分かった。

心の安定のため、という大義名分が成り立つかどうかは、本人の意識次第な部分があるが、この奇妙な関係は、一般的に受け入れてもらえるかはわからないのが正直なところ。

俺も、やましい気持ちは全くないが、……かずとのことは、昌宏さんには言いづらいものだから。

「……相葉くんに大事にしてもらうんだよ」

「……うん」

「喧嘩したら慰めてやるからな」

「うん(笑)」

顔を見あわせて、クスクス笑いあった。

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