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キラキラ

第22章 1ミリのユウキ

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遠い意識のなか、頭元においてたスマホが賑やかに鳴ってるのがわかる。


「………」


うるさい、誰だ?
今、何時だ?

目をつぶりながらスマホを探しあて、眠い目をこじあけて画面を確認する。


「……え…」



……潤?


時計に目を走らせると8時。
不思議に思いながら耳にあてた。
こんな時間に電話なんかよこしたことないのに。


「……はい」


「え?!まさかの寝起き?!」


すっとんきょうな叫び声が聞こえてきて、思わず眉間にしわがよった。



「……え?」
 

「大遅刻だよ!」


電話口の彼は、大慌てだが、俺には意味がわからない。
俺は、ゆっくり起き上がって今日の予定を反芻する。


今日は……昼から収録だった気がするけど。
変更になったのか?


「え……俺、朝からだっけ?」


「調子でも悪いの?」


「……いや」


「じゃあ、1分で仕度してでてきてね!」


「え?俺、収録……」


「はあ?まだ寝ぼけてるの?!すぐ来て!」


半ば、悲鳴ともとれる叫び声に、唖然としているうちに、ぶちっと電話を切られた。


俺の前では、遠慮がちで物静かな潤。
こんなに、わあわあ俺にかみついてくるのは、デビュー当時以来だ。
新鮮だな、懐かしいなとも思うが。


「……つか、どこに来いって?」


とりあえず、マネージャーに確認しようと、そのまま電話したら、無機質な女性の声で、

『おかけになった番号は、現在使われておりません』

と、言われてしまった。



「……は?」


スマホを持ったまま固まる。


マネージャーのやつ。スマホを、水没させたか?


……しょうがねーな……。



気を取り直して、他のメンバーのマネージャーに連絡をとって確認することにする。


「……?」


だが、ことごとく、通じない。

女性の声しか聞こえないスマホをぷちりと切り、くしゃくしゃな髪をかきあげ、ひとりごちた。


「……どーいうこと?」


なにこれ??
なんで全員通じねぇの?



仕方なく、もう一度、潤に電話した。
今、連絡がとれるのはこいつけだ。
長いコールのすえ、でた潤に、

どこに行けばいいのか、と問えば。

あきれた声で意外な場所を指定された。

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