キラキラ
第22章 1ミリのユウキ
30秒ででてきてね!と、潤に狭いロッカールームにおしこまれた。
バタンと目の前で閉まったドアに、唖然とする。
「……なんだよ……」
何がなんだかわからない。
朝が弱いくせに、異常に元気な潤にも違和感あるし、ロケのわりには、みたところ撮影隊がいないし。
隠し撮りかなあ…。
まさかのお仕事体験?
いくつか並んでいるロッカーのひとつに「櫻井」と、かかれたものを見つける。
そっとあけたら、潤が着てたのと同じジャージがぶら下がっていた。
とにかく、言われた通りにしてみようと思い、着ていたシャツとジャケットをもそもそと脱ぎ、ジャージに着替えた。
ロッカーの上の段の小さな物置のスペースに、潤がつけていたみたいな花の形の名札。
「……これつけろってか?」
ひらがなで、「さくらいしょう」って書いてある。
左の腰辺りに、とめる。
ロッカーの扉部分の小物入れのような場所には、ひっかけるところがついており、ホイッスルやら、人工呼吸用のマウスピースやらのグッズがぶら下がっていた。
潤が確か首からかけてた。
「………これもかな」
同じように首にかけて、ロッカーの扉をしめた。
部屋のすみにある姿見に、自分の姿をうつす。
見た目だけはいっちょまえな、幼稚園の先生が出来上がった。
「………なんの番組なんだろ?」
もう一度首をかしげて、俺はロッカールームをでた。
園のグランドでは、揃いの黄色いぼうしをかぶった子供たちが、思い思いの遊びに夢中になってた。
鬼ごっこをしているもの、鉄棒やジャングルジムによじのぼってるもの、砂場にいるもの、ボール遊びをしているもの……ある意味、無法地帯だ。
グランドを見つめながら、子供を送ってきたとおぼしき母親と、話をしている潤を見つけた。
俺の姿に気がついた潤が、こっちこっち、と手招きする。
「櫻井先生おはようございます」
母親からにこりと挨拶される。
俺の設定はやはり、先生なんだ、と思いながら、
「おはようございます」
と営業アイドルスマイルを作った。
「なんかね、かずくん、朝からグズグズしてたみたいなんで。体調の変化に気をつけてほしいそうですよ」
潤が、横から説明してくる。
はい……といいながら、そんなことまで俺らが気にしないとダメなの?
と、ちょっとひく。
体験だろ?俺ら。