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キラキラ

第22章 1ミリのユウキ


すると、母親の後ろで、母親の上着にぎゅっとしがみついてこっちを見あげている男の子と目があった。


瞬間、何かに気がついた。
その何かを考えようとしたときに、その男の子が着ているスモックの左胸に目がいった。

チューリップの形をした、可愛らしい名札。
それには、マジックで大きく、


にのみやかずなり


平仮名で確かにそう書いてあった。


「……」


同姓同名?

でも……。


その白い肌といい、少しとがった唇といい、茶色い瞳といい……。
その子は気持ち悪いほどに、にのに似ている。


じっと俺を見上げる目は驚くほどに澄んでいて、純粋で綺麗だった。
しばらく、唖然として見つめてると、

「かずくん、遊んでおいで?」

傍らから、潤が優しく促した。

だけど、その子は母親の上着をはなさなかった。
ふるふると首を振り、しまいには上着に、ぽすっと顔をうずめてしまう。

「ほら、かず。お友だちとあそんでいらっしゃい?」

母親もその場にしゃがんで、その子と同じ目線で促した。


そのとき、パタパタと軽い走る音がしたかと思ったら、グランドで遊んでた一人の子が駆け寄ってきた。

「かず、おはよ!遊ぼう!」

元気な声。
さらさらの黒髪に、つぶらな瞳。
日に焼けた健康そうなやんちゃな肌。


名札には


あいばまさき


と書かれていて。


「ほら、まーくんも来てくれたわよ」

母親が背中をおすと、かずくんは、つとひかれるように顔をあげた。
まーくんは、かずくんの手をぎゅっと握り、

「行こ!」

と、走りだした。


小さな二人の背中を三人で見送り、母親は安心したように立ち上がって微笑んだ。

「じゃ、松本先生、櫻井先生、よろしくお願いします」

「はい。お預かりします」 

潤がペコリと頭を下げた。
俺も、一緒に礼をする。

……って。
なんだこれ。


狐につままれた感覚とはこのことか。

よく知るメンバーのちっさいバージョンがいる。
ボーイソプラノの舌ったらずな感じが、可愛らしいっちゃ可愛らしいが……なんとも気色悪い。

そっくりさんの子役を見つけてきたにしても……手が込みすぎな気がする。


だいたい、このロケはなんだっつーんだ?!


ぐるりとあたりを見回すが、隠しカメラらしきものも見当たらない。
マネージャーもいない。

潤は、元気だ。

おかしい。

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