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キラキラ

第22章 1ミリのユウキ




「はーい。じゃあ、好きな人や、好きなもの、なんでもいいから描いてみよう」   

四つ切りの画用紙を前にした園児たちは、潤の号令で、目を輝かせて、思い思いにクレヨンを手に取った。

俺は、潤の隣に突っ立って、ぼんやりと自分の置かれてる状況を整理していた。

まず。
俺は、番組でもなんでもないガチな仕事についてるということ。
そして、その仕事は幼稚園の先生ということ。
俺らは、嵐じゃないこと。
園児のなかに、相葉くん、にの、大野さんのちっさいのがいること。


以上から導き出される答えはひとつ。


俺は、軽く目をつぶった。
そして、ゆっくり開ける。


……これは、夢だ。


だって、そうだろう。
嵐が、存在してないこんな状況。
俺の大事な恋人が、性格キツクなってるこんな状況。
夢以外に何があるというのだ。
悪夢だ。悪夢。


俺は、小さくため息をついた。


……にしても、マジリアルな夢なんですけど。
…早く覚めねえかな……。



「櫻井先生。起きてます?」

「……え」

「見回ってくださいよ。ボケッと突っ立ってないで」

「あ……ああ」


目が笑ってない潤に小さく言われ、ぎこちなく足を踏み出した。


ドラマで保育士はやってはいるが、展開のわかってる状況と、今とは全く違う。
何をしたらいいのか、さっぱりわからない。

このチューリップ組は、俺と潤が担当してて、立場的にはどうやら俺が上らしい。
もっとも、今の俺はポンコツ状態だから、フルで仕切ってるのは潤だ。
どうしたの、やっぱり体調悪いの?といいながらも、テキパキ仕事をすすめていく潤はさすがだ。


近くの席で、真っ赤な車を描いてる男の子に近寄る。

「上手いじゃん」

「うん」

「車好き?」

「うん。あと、バスも」

「そっかー」

「さくらい先生、みてー?」

「ん?どれどれ」


そうはいっても、園児たちは可愛かった。
無邪気になついてくるパワーに、沈みゆく気持ちが少し晴れてくる。


お…まーくん。


相葉くんのちっちゃいのは、どうやらラーメンらしきものを描いてるみたいだった。
大きな丼から、ぐりぐり一生懸命湯気を描いてる。
丼にもたくさん模様をつけてて、なかなかの力作。


「美味しそうじゃん」

「ふふ」

まーくんが、俺をみて嬉しそうに笑った。


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