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キラキラ

第22章 1ミリのユウキ

隣で、生き物の絵を書いてるのは、かずくん。

雰囲気から察するに、キリンの絵を描いてるみたいだった。
大きいキリンと小さいキリンを、黄色で一生懸命塗りつぶしてる。

「キリンの親子?」

「……うん」

「上手、上手」


かずくんはにこっと笑って、俺を見上げ、今度はキリンの模様を描きはじめた。


……可愛いなあ。


思わず目尻がさがる。

でかいにのも、こんくらい素直になりゃ可愛げあるのにな。

自他共に認める、ひねくれた性分をもつ神経質な男を思い出す。


その向かいで器用にクレヨンをすべらしてるのは、さとしくん。

小さい頃から造形は得意だったんだろうな。

幼稚園児にしとくには、おしいクオリティの人物画を描いてる。

……はっきりいって俺より上手かもしんない。

大きな目に、太い眉毛に、短い黒髪。
これ、誰がみても潤じゃん。

「……松本先生?」

「あたり」

ふふと、笑って、さとしくんは、今度はその隣にもう一人の顔を描きはじめた。

横分けにした黒髪。大きな瞳。黒い服……

「俺?」

「そう」

さとしくんは真剣に、だがのびのびと俺たちの似顔絵を描いてみせた。


……すげぇ。


俺が、さとしくんのところから動かないからか、潤が歩み寄ってきた。


「どしたの?」


「みて。松本先生と俺だって」


さとしくんは、好きなものを描きなさいという指示に、俺らを描くんだな。

ちょっと感激してたら、さとしくんは、最後に潤と俺の顔の間に、でっかいハートを描いてみせた。

「できた~」


できたって……最後のはいらないだろ!?

思わず潤と顔を見合わせる。

すると、さとしくんは、ふふふと笑ってみせた。

「だって。かーちゃんが、まつもと先生とさくらい先生は、ラブラブねって、いつも言うもん」

「……!」

「さ……さとしくん」

か、かーちゃんが……って!

慌てる大人をよそに、さとしくんはのんびりと笑って、「それに……」と、続けた。

「こないだ、ぼく、先生たちがちゅうしてたの見たよ」

ぶっ……!

園児の前で何してんだ俺ら!


無駄に焦りながら潤をみると、潤は真っ赤になっていた。
そして、キッと俺が悪いとばかりに睨んでくる。

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