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キラキラ

第22章 1ミリのユウキ

結局、園児三人に言いように弄られた俺たちは、凄まじい疲労感にさいなまれながら、お絵かきの時間を終えた。

画用紙を集めながら、前に立つ潤の顔をうかがえば、さっきまでのスッピンな心をさらした顔ではなく、しっかりと先生の表情をして微笑んでる。


さすがだよ、潤。


ふう…と、息をつきうつむく。


キスか……。
俺がしかけるってあんまないよなあ……。


チラリともう一度潤をみた。

少し厚めな唇がにっこりと弧を描いてる。
口元にあるホクロがなんとも色っぽい。

俺がベッドであいつの顔を見上げるとき、目をあわせると恥ずかしいから、という理由で、一番見つめてしまうところ。

そうしてるうちに、潤はくすりと笑いながら、その唇をスローモーションのようにおとしてくる。
俺は、それを目を閉じて受け止める………のだが。


マズイ。
ドキドキしてきた。


……キスですらご無沙汰なんだよ。


嫌がる潤を無理矢理って……欲求不満なのかな、俺。


ふと。
こちらをみた潤と、バッチリと目があった。
すると、潤は、すっと視線を逸らした。


あからさまだな、おい。


そこまで、ツンツンしなくてもいいんじゃね?
先生同士ってのは、そんなにマズイ?




「……片付けよっかー」


気をとり直して、散乱してるクレヨンを集めるように、園児に促していると、片付けを終えた子は、みんな黄色い帽子をかぶって、次々に外にでて行ってるのに気づいた。


なんかあんのかな?


「……なあ。外でなんかすんの?」 
 

すると、潤は俺を見て、怖いものでも見るような顔になった。


「……どうしたの。櫻井先生。いつも変だけど、今日は特別変だよ」

「いつも、は余計だろ」


幼稚園のスケジュールが全くわからないんだからしょうがねーだろ……。


ぶつぶつ思っていたら、潤がおもむろに外を指差した。


「外遊びの時間でしょ。まーくんたち待ってるよ」

「俺を?」

「なにいってんの。毎日あの子たちとサッカー勝負してんじゃん!」


苛立つように怒鳴られ、半ば追い出されるように外に出た。


なんだか。
完璧尻にしかれた旦那みたくなってる。


優しい潤に会いたい……。


しゅんとして、とぼとぼ歩き出すと、

「さくらい先生!たいへんっ!」

「はやくきて!」

女の子二人が俺に駆け寄ってきた。


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